「1年目で2桁は取りたい」ガンバの救世主・山見大登が語る、山本悠樹の存在と見据える未来
8月13日にIAIスタジアム日本平で行なわれたガンバ大阪vs清水エスパルスの一戦で、“救世主”が現れた。残留争いとまでは言わないものの、下位に低迷し、順位も近かった両者の対峙で、2021年加入予定の特別指定選手であるガンバ大阪・山見大登が決勝点を奪ったのだ。
右サイドからのカットインで左足を振り抜き、内巻きのシュートをゴール左隅に突き刺した。その約3週間後に行なわれたルヴァンカップ準々決勝第1レグ・セレッソ大阪戦でも89分に見事なコントロールショットで試合を決めている。
1カ月に満たない期間でガンバサポーターの希望となった山見大登だが、決してエリートではない。高校までは文字通り無名で、高校卒業後にはサッカーから離れるつもりだった。それでも、進学先の関西学院大学で急成長し、幼少期から応援していた地元のクラブであるガンバ大阪入りを決め、プロサッカー選手としてスタートを切る。
件の2ゴールの背景や大学での意識の変化、そして先輩であり盟友・山本悠樹との関係やエピソードまで、大いに語ってくれた。
“ぶっつけ本番”で結果を示す
――特別指定として登録されて、試合に出場するまでの経緯を教えてください。
「天皇杯のガンバ戦でチームが負けた後に、『特別指定で呼びたい』と言われたんです。ガンバが連戦を控えていたというのが理由ですね。同時期に、たまたま総理大臣杯(夏の全国大会)の予選に負けて、リーグ戦までの期間が空いたので、正式にお願いがあったという形です。ちょうど僕が参加するタイミングでケガ人が重なって、パトリック選手やウェリントンシウバ選手が離脱していました。前線の選手が足りないのでチャンスはあるかなと思っていましたね」
――清水戦の前に、練習の紅白戦でトップチームのメンバーに入ったりはしていたのでしょうか?
「いえ、紅白戦はしていません。合流した日がリーグ戦(第23節 徳島戦)の前日だったので、セットプレーの確認のみでした。その際、ベンチ組に入った程度です。連戦の中日だったので、フルピッチのゲームはせず、ぶっつけ本番で試合に出たという感じですね」
――0-0の状況で試合に出ましたが、その時の心境は?
「さすがにここでデビューはないかな、と思っていました。呼ばれたときはびっくりしましたけど、出るからには結果を残してやろう、と」
――実際に結果も残しましたけど、得意の左から右のカットインではなく、逆の形で左足で決めました。なかなか見ないシーンだったので驚いたのが正直なところです。
「関学では左をやることが多いのでああいった(右から左の)カットインの形を見せることは少なかったですけど、練習の時はけっこう同じような形のシュートは決めていたので、自信はありました。蹴った瞬間に『あ、これいくんちゃうかな?』と思いましたね(笑)」
――あの決勝点によって評価も変わったのかなと。
「一緒に練習する機会がなかったので、やっと認めてもらえたなと。ガンバが勝てていない状況だったので、周りの選手からは『凄いなお前』と言われました。2連敗中でしたし、エスパルスは順位も近いから負けられないという話もあったので」
――その後、ルヴァンカップ準々決勝第1レグの大阪ダービー(セレッソ大阪戦)でも点を決めました。地元出身のガンバサポーターということで、あの試合で点を取る意味をわかっていたのかなと。そういう意味では違った感情があったのかと思います。……
Profile
竹中 玲央奈
“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。