この夏、チェルシーへの移籍が噂されたセビージャのフランス代表CBジュール・クンデ。結局移籍は実現しなかったが、178cmの22歳がセビージャで見せているプレーは必見だ。「世界唯一」の型破りなCBの特殊なプレースタイルを、セビージャで彼の成長を追ってきた木村浩嗣氏に解説してもらおう。
クンデがいかに型破りなCBなのかを知るために、まず今年2月のコパ・デルレイ準決勝バルセロナ戦のゴールを見てほしい。「Kounde Golazo」で検索するとすぐに動画が出て来るはずだ。
バルセロナ戦のゴラッソに象徴される「特殊性」
CBが攻め上がってゴールするとなると、セルヒオ・ラモスやピケのお得意のプレーを思い出す。気づかれないようにするすると上がって、ゴール前でリターンをもらって頭か足でシュートする。シュートまでの間にボールを触るのは最初のボール出しか、最後のサイドへの展開くらい。当然だ。気づかれずに上がってノーマークになることが重要なのだから。
だが、クンデのこのゴールは違う。自分で持ち上がり、タックルをひらりとかわし、仲間とのパス交換とスクリーンプレーでマークを外すと、最後にもう一度タックルをかわしてファーサイドのネットを揺らした。このゴールがクンデのすべてではないが、「こういうことをできるCBがクンデなんです」とは言えるだろう。そういう意味で名刺代わりにはなる動画だ。
クンデが型破りなのは、あまり他のCBでは見ないプレーを見せてくれるからだ。
世界最高峰を争う「スーパーなCB」と呼ばれているのは今だと、デ・リフト(ユベントス)、ファン・ダイク(リバプール)、ルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)、マグワイア(マンチェスター・ユナイテッド)あたりなのだろうが、彼らがこういうゴラッソを見せるシーンは想像できない。
そもそもスーパーなCBとは「強靭な体格でスピードがあり足技がある」という3拍子がハイレベルでそろっているCBであって、「別にゴラッソは必要ない」とか「それはCBの本分ではない」という議論はあるだろう。高くて強くて速くて上手ければ、それで十分だ、と。
まるで右SBのようなヒートマップ
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。