SPECIAL

フットサル指導者・鈴木隆二が解説。川崎のコンビネーションに隠された「2人組の関係」

2021.08.09

2021シーズンもJ1で圧倒的な強さを見せ、前半戦で早くも独走態勢に入った王者・川崎フロンターレ。彼らの特徴の一つであるコンビネーションプレーは、息を呑むほど絶妙でフットサルを想起させるほど。そこでブラジルでサッカーをプレーした後、スペインでフットサル選手、指導者として活躍した異色のキャリアを持ち、両競技の融合を掲げているフットサル日本代表コーチ・鈴木隆二氏に川崎の「2人組の関係」を解説してもらった。

 川崎フロンターレ(以下、川崎)の試合を見て「ボールを持っていないオフ・ザ・ボール(オフ)の選手がゲームを主導している」と感じた。例えばサッカーでは、パスをした選手が次のスペースへ侵入せず、その場にとどまることが効果的な時が多くある。しかし、川崎の選手はポジションにかかわらず、パス&ゴーを頻繁に繰り返す。そしてオフの選手が積極的に次のスペースに侵入し、敵味方に影響を与え続けていた。攻守においてオフの選手一人ひとりが積極的、主体的にゲームに関わり続けていたのである。

ダミアン&三笘が好例!「2人組の関係」によるホットライン

 中でも川崎が得意としているのは「2人組の関係」による連携プレーだ。2人組の関係による連携プレーとは、ボールを持っていない選手が主導するパス&ゴーを基礎としたお互いの個性や特徴を生かした相互作用である。現象としては1つのコンビネーションプレーであるが、選手同士が同時に同調(シンクロ)する「阿吽の呼吸」のレベルまで高められれば、常に相手よりも一歩先を行くことができる。また、相手に対応されても、そこからタイミングを変え、時にはタメを作るような遊びを入れることも可能になり、駆け引きへと発展させられる。

 特に川崎の連係プレーの中でWGとSB、WGとCFは抜群の相性を見せている。例えばレアンドロ・ダミアン選手が前向きでボールを持つと三笘薫選手は必ずサイドレーン、またはハーフスペースから中へ入り込んできて、ダミアン選手は三笘選手のスピードを殺さないように前方にパスを出す。例えばJ1第1節、横浜F・マリノス戦の11分のシーン。

https://youtu.be/tESlZQT9tOU?t=71
J1第1節、横浜FM戦のハイライト動画。分析対象のプレーは1:11から

 左サイドの三笘選手はまず縦へ進み、ダミアン選手がパスを受けて前を向いた瞬間、ゴール方向に斜めへ走り出す。角度を変えると同時にスプリントを始めたのは、ボールが欲しい場所とタイミングを示すため。そこにダミアン選手から出てきた絶妙な力加減のパスを受けた三笘選手は、1対1のビッグチャンスを迎えている。

 また三笘選手がハーフスペースで1対1を仕掛けると、ダミアン選手はペナルティエリア内やその付近でフットサルのピヴォの役割(ポストプレー)を果たし、ワンツーや落としによってシュートを撃たせる。J1第11節、セレッソ大阪戦の三笘選手のゴールが象徴的だ。……

残り:4,619文字/全文:5,847文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

J1リーグ川崎フロンターレ戦術

Profile

鈴木 隆二

1979年5月7日生まれ。東京都出身。高校時代はブラジルに渡りボタフォゴFCでサッカーをプレー。帰国後大検を取得し、駒澤大学サッカー部に入部。同大学卒業後にフットサル選手に転身。2005年にはフットサル日本代表に選出。名古屋オーシャンズからスペイン2部リーグへ移籍。同リーグのマルトレイ所属時に1部昇格も経験。スペイン指導者ライセンスレベル1~3を取得。同クラブで指導者キャリアを始め、育成年代リーグ優勝2回、準優勝2回。育成年代コーディネーター、トップチーム監督を務めながら、U-12、U-14カタルーニャ州選抜コーチを兼任。16年にU-19フットサル日本代表監督兼フットサル日本代表コーチ就任し、19年にU-20 AFCフットサル選手権優勝。現在はフットサル日本代表コーチに専任し、9月開催のフットサルW杯に向けて取り組んでいる。筑波大学大学院博士前期課程修了。

関連記事

RANKING

関連記事