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「サッカーファイナンス」とは何か?――答えは「お金集め+お金の配分」

2021.07.12

山田塾×footballistaコラボ企画

この記事では「サッカーファイナンス」という言葉をあらためて定義してみようと思う。参考にしたのは2021年5月から本格的に始動した「山田塾」の講義だ。「山田塾」は「オトナのスポーツファイナンスゼミ」と題して、スポーツファイナンスに精通した講師陣により毎月1回、勉強会が開催されるコミュニティである。昨年の『フットボリスタ第81号』で「PE ファンド」や 「ヘッジファンド」に関する記事を寄稿した山田聡氏、シント=トロイデンVVのCFOである飯塚晃央氏、デロイトトーマツグループのスポーツビジネスグループシニアヴァイスプレジデントの里崎慎氏、九州産業大学准教授でVリーグ男子2部のヴォレアス北海道の社外取締役でもある福田拓哉氏の4名から講師陣が構成されており、アカデミックと実務双方の視点からスポーツファイナンスを学ぶことができる。

5月28日に第1回「リーグの構造とクラブのファイナンス」、6月18日に第2回「フットボールクラブのファイナンス:概論編」の講義が開催され、今回は主に第2回の内容を参考にしながら、「サッカーファイナンス」について掘り下げていきたい。

サッカークラブのお金の集め方&配分の仕方は?

 ここでは「サッカーファイナンス」は「サッカークラブがお金を集めて、そのお金を配分すること」と定義したい。第2回の講義で里崎氏よりこの点に関連する解説があったので、その内容を参考にしながら、上記の定義について具体的に見ていきたい。

 まずは定義の前半部分である「サッカークラブのお金の集め方」から述べる。

 つまり、「サッカークラブはどういう利害関係者からどういう形で収入を得ているのか」という観点だ。第一に、クラブを保有するオーナーが出資金、あるいはスポンサーも兼ねることで協賛金をクラブに入れるという形が挙げられる。例えば、ユベントスはイタリアの財閥アニエッリ家が保有しつつ、ユニフォームのスポンサーとしてステランティス(アニエッリ家が保有するイタリアのFCAが2021年1月にフランスのPSAと合併して誕生したグループ)のブランド「ジープ」が名を連ねている。

 オーナーに限らず、クラブとは資本関係のないスポンサーによる協賛金もクラブにとって重要な収入の一つであり、他に代表的な資金の出し手としてはファン・サポーター、メディア、リーグ・他クラブがいる。ファン・サポーターはチケットやグッズを購入することでクラブに直接お金を支払っているだけでなく、DAZNのようなメディアに支払う視聴料が、メディアから放映権料として、又はJリーグのようにメディアからリーグを経由して配分金という形でクラブに流れているのは読者もご存知であろう。

 リーグは配分金の他に賞金をクラブに授与することもあるし、他クラブは移籍金という形で資金を供給する存在であると位置づけることができる。例えば、アタランタにとって、ユベントス、インテル、ミランは重要な資金の出し手という表現ができる(3クラブはそれぞれクルゼフスキ、バストーニ、ケシエ等を獲得するためにアタランタに多額の移籍金を支払っている)。……

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サッカーファイナンス経営

Profile

schumpeter

2004年、サッカー雑誌で見つけたミランのカカを入口にミラニスタへ。その後、2016年に当時の風間八宏監督率いる川崎フロンターレに魅了されてからはフロンターレも応援。大学時代に身につけたイタリア語も活かしながら、サッカーを会計・ファイナンス・法律の視点から掘り下げることに関心あり。一方、乃木坂46と日向坂46のファンでもある。

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