30代前半で世界的なステータスを獲得したユリアン・ナーゲルスマンには、ホッフェンハイムの育成組織で働いていたキャリアの初期から二人三脚で仕事を進めてきた分析官がいる。ほぼ同い年のベンヤミン・グリュックだ。現在34歳のグリュックは指揮官とともにRBライプツィヒに移る前、ビデオアナリストとしての活動内容についてドイツメディアに明かしていた。稀代の戦術家の右腕は、どのように試合を分析しているのだろうか。
※『フットボリスタ第84号』より掲載。
対戦相手分析の進め方は?
初めに、肝心の試合分析の進め方から見ていきたい。対戦相手についてどのくらいの試合を分析するのか、グリュックはこう答えている。
「少なくとも2、3試合は詳細に分析する。その相手チームがどれほど多くのフォーメーションを使っているかによって、見る試合の数も変わってくる。最近ではどの監督もシステム変更を頻繁に行い、バリエーションも多く、ますます複雑になってきている。そのため相手がどんな基本布陣でスタートするのか、予測するのは難しいんだ」
現在のRBライプツィヒを見ても、どの試合でも3バックと4バックに対応でき、同時に1トップでも2トップでもプレーできるような選手を先発に並べている。相手の出方に応じて試合中に調整するためだ。ライプツィヒが後半に流れを大きく変える試合が多いことからは、ハーフタイムに相手を見極めた上で対応していることがうかがえる。
「ハーフタイムにビデオを見せる時は、基本的には試合前に準備してきたことがピッチ上で実際にこう起きているというのを確認する。だが、相手がまったく予想と違った布陣で戦ってくる時がある。そういう場合は、準備したビデオは見せずに監督が戦術ボードを使って自分たちのシステム変更について説明する。ハーフタイムに常にビデオを見せるとは限らない」
分析を行う手順やポイントは?
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Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。