リカルド・ロドリゲス監督が率いる浦和レッズで“異変”が起こった。日本でもトップクラスの実績を持つ西川周作に代わって、18歳の鈴木彩艶が正GKに指名されたのだ。そのチャンスをものにし、ハイパフォーマンスを継続。そして、東京五輪に臨むU-24代表の候補メンバーにも選出された。多くの人が才能を認める次世代GKは浦和レッズ、そして日本サッカーに何をもたらすのか。清水英斗氏に解説してもらおう。
6月の日本代表シリーズでは、川島永嗣、権田修一、シュミット・ダニエル、中村航輔、大迫敬介、沖悠哉、谷晃生、鈴木彩艶と、A代表、U-24代表を合わせて8人のGKが選出された。近年の日本代表はCBの大型化が進んでいるが、その傾向はGKも同じだ。8人のうち、190センチ越えの身長を持つGKは、シュミット・ダニエル、谷、鈴木と3人をそろえ、特に若い世代の大型化が目立つ。
一方、体重に目を移すと、シュミットは197センチ88キロ、谷は190センチ84キロと、やや線が細いのは気がかりだ。実は今回招集された8人のうち、体重が90キロを超えるGKは、18歳の鈴木1人だけ。190センチ91キロと、逞しい体を持っている。
これはGKのプレースタイルと関わりが深い。
90キロ超えのGKによる「アタック」
例えば、J1第17節の浦和対名古屋では、典型的な鈴木の長所が見えた。後半15分に名古屋がセットプレーの二次攻撃から、再びクロスを入れてきた場面で、鈴木は果敢に飛び出し、名古屋の木本恭生に体をぶつけながら、ボールをキャッチする。そのまま木本の上に着地した。
巨体に乗られ、足を痛そうにした木本は、すぐにはプレーを再開できなかった。ただ、鈴木側にしてみれば、ボールに触れていない相手に体をぶつけられ、不当なコンタクトを受けたとも言える。この場面はノーファウルだったが、もしも笛を吹くとすれば、木本のファウルだろう。気の毒だが。
鈴木はボールに果敢にアタックできるGKだ。直線的に、最短距離でアプローチし、その線上に相手がいれば、体をぶつけてでもボールに先に触る。その時、線の細いGKの場合は、接触によってバランスを崩しやすく、キャッチやパンチングを失敗する恐れが大きい。ケガをしやすいのも難点だ。その意味では、体重90キロを超える鈴木のがっしりとした肉体と、アタック型のプレースタイルは、親和性が高い。……
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清水 英斗
サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。