ヴィッセル神戸が5月7日、「SNSでの差別的発言、誹謗中傷に対するガイドラインの策定とご協力のお願い」という題でSNSガイドラインの制定・公表を実施した。隆盛を極める現代のSNSはサッカーの場面でもクラブと選手、ファンの距離を縮め、これまでにないコミュニケーションを実現して久しい一方で、過激で陰湿な嫌がらせや差別発言をもカジュアルに加速させてしまい、人を恐怖させる負の側面も併せ持つ。その現状にNOを突きつけるガイドラインを策定した経緯や意図について、ヴィッセル神戸広報部の芹田晋平さんに話を伺った。
SNSガイドライン策定の経緯
――このガイドラインはどういう経緯で準備し、発表に至ったのでしょうか?
「春先にかけてヨーロッパでもSNSを介した誹謗中傷や人種差別が問題になり、イングランドではプレミアリーグやチャンピオンシップのクラブ、FA(イングランドサッカー協会)といった協会を含めてSNSを更新しない期間がありました。選手たちもSNSを離れる形で呼応していく流れがあったと思います。そういう事例がある中で、チームの選手からも、『我われからもそういうことができないか』という話が出ました。我われクラブスタッフ側も問題意識はずっとあり、チームとしても昨年9月の川崎戦の時期などに『なりすまし』で結構ひどいメッセージがありまして、コメント欄でも負けが続くとひどいコメントが続く、という認識はしていました。そういう動きがあって選手からも話があって、クラブ内で協議をして公表に至りました」
――協議から策定、公表までの期間はどれくらいでしたか?
「1週間くらいだと思います。鉄は熱いうちに……というか。これに関しては、『違うだろう』という意見を持つ人はそれほどいないだろうと考えましたし、合意形成もスムーズにいったことで早く公表できる形になりました。広報の何人かが中心になって進めました」
――策定にあたり、参考にしたガイドラインはありましたか?
「プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスもガイドラインは昨年に作成していましたし、読売ジャイアンツだったり福岡ソフトバンクホークスだったりもガイドラインはあるので、そういったものを参考にして作成しました」
――ガイドラインには「法的措置」のような具体的な対応も明示されています。
「Jリーグも誹謗中傷、特に『なりすまし』の誹謗中傷というものを重く見ています。先ほど挙げた昨年の川崎戦に関しては、その前後3試合くらいの対戦チームが同じような被害にあったりというのをJリーグも認識していて、対応しようとしたり、クラブが警察に相談したりということをしています。SNSを介した誹謗中傷で著名な方が亡くなられることもありましたし、そのような問題意識を持って踏み込んで記載する、ということは考えていました」
行き過ぎた言葉は、選手のプレーにも影響が出る
――先ほど「選手からも話があった」と言葉がありましたが、選手とのどのようなやりとりを念頭に置いていますか?……
Profile
邨田 直人
1994年生まれ。サンケイスポーツで2019年よりサッカー担当。取材領域は主にJリーグ(関西中心)、日本代表。人や組織がサッカーに求める「何か」について考えるため、移動、儀礼、記憶や人種的思考について学習・発信しています。ジャック・ウィルシャーはアイドル。好きなクラブチームはアーセナル、好きな選手はジャック・ウィルシャー。Twitter: @sanspo_wsftbl