先月、世界中を巻き込み大きな波紋を呼んだ欧州スーパーリーグ構想からは距離を置く姿勢を見せたブンデスリーガ勢。しかしながら、国内では近年のビジネス化の波に対する不信感・嫌悪感が高まり続けており、コロナ禍を境にファンがサッカーから離れてしまうのでは、と危惧する声すら聞かれている。 観客動員数世界一を誇ってきたブンデスの熱狂的なファンに何が起こっているのか、その現状を伝える。
※『フットボリスタ第83号』より転載。
ブンデスリーガの試合を中継するテレビ局『Sky』は、視聴者にとても上手に幻想を抱かせる。視聴者は試合を見ながら、からっぽのスタジアムで実際に聞こえるサウンドか、あるいは驚くほど本物に近い満員のスタジアムのサウンドを選ぶことができる。後者を選んだ場合、対戦する両チームのファンたちの歌声が、得点チャンスの時には歓声、ファウルの時にはブーイングや野次が聞こえてくる。そして時には「サッカーマフィア DFB」という怒声さえ聞こえる。どんどん遠くなっていく感じのするコロナ前の時代、再びやってくるのか誰にもわからない時代の感情と儀式を思い起こす音である。
もしかするとこのパンデミックは、多くの人々をサッカーから離れさせる最後の一押しになるかもしれない。「コロナ前にもすでに、サッカーの発展の仕方が気に入らない人はたくさんいた」と『ツァイト』紙。ミュンヘンの『メルキュール』紙のインタビューではファン同盟「Pro Fans』の代表者が「もちろんコロナ禍を機にサッカーと距離を置く人たちもいるだろう」と発言している。「人生にはサッカー以外にも楽しいことがあると気づいた人がたくさんいる。パンデミック以降も、ここ10年間の動きがほとんどそのまま続いていくという印象が定着してきているからだ」と。
新放映権料契約には「失望」
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Profile
ダニエル テーベライト
1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。