前人未到となる“クアドルプル”(国内リーグ、国内カップ、リーグカップ、欧州カップ戦の4冠)へ向け前進を続けてきたマンチェスター・シティ。主要タイトル1冠に終わった昨季から、チームの戦い方はどう変わったのか。五百蔵容さんに分析してもらった。
一般的な「ビッグクラブ」であれば十分に成功と評される成績でも、現在の彼らに課せられたミッションから考えれば昨季(2019-20)は大いに苦しんだと言えるマンチェスター・シティ。プレミアリーグを落とし、最大の目標と思われるチャンピオンズリーグ(CL)も、イングランドサッカー史上初の国内3冠を達成した2018-19と同じく、準々決勝で敗退。レアル・マドリーを第1レグ・第2レグtともに見事な作戦で葬り去ったCLのラウンド16など試合単位では見事なパフォーマンスを見せましたが、シーズンを通じ内容面では停滞と言っていい状態で、失点もかなり増えており(2018-19の23に対し35)ここ一番での不安定さに繋がっていました。
しかし今季(2020-21)は一転、チームは過去最高とも言えるパフォーマンスを取り戻し、国内3冠を再び狙える位置に付けるとともに CLでもジョセップ・グアルディオラ体制下で初のベスト4に進出。4冠をもうかがっています。
マンチェスター・シティの試合を継続的に観測し分析すると、この好調は昨季の不調と強く関連していることがわかります。本稿では、彼らの不調と好調を連続したプロセスとして推測し、「新戦術」によってではなく「ポジショナルプレーの構想によって実施可能なパフォーマンス」を高いレベルで回復したために得られた向上なのではないか?ということを記していきます。
そして、公式戦28戦無敗(21連勝)、プレミア15連勝という破竹の時期、彼らに相対する戦術家たちがいかに「グアルディオラのマジック」のベールを剥いでいったかを概観しつつ、このマンチェスター・シティをもってしても難関と思われる4冠、なかんずくCL、ビッグイアーの帰趨について考えてみたいと思います。
停滞の2019-20:失われた多層性
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五百蔵 容
株式会社「セガ」にてゲームプランナー、シナリオライター、ディレクターを経て独立。現在、企画・シナリオ会社(有)スタジオモナド代表取締役社長。ゲームシステム・ストーリーの構造分析の経験から様々な対象を考察、分析、WEB媒体を中心に寄稿している。『砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか?』を星海社新書より上梓。