いよいよ終盤戦に向かうラ・リーガの優勝争いを左右するビッグマッチ、アトレティコ・マドリー対レアル・マドリーは1-1のドロー決着。数字の上ではアトレティコが戴冠へ一歩前進する結果となったが、同時に指揮官シメオネへの不安が顔をのぞかせた90分間でもあった。注目の一戦を、木村浩嗣さんが振り返る。
「劣等感」というのはなかなか拭えるものではない。成功を続けても頭の片隅には「相手が上だ」という不安がある。客観的な評価で劣位が証明されており、「よって我われは挑戦者だ」というポジティブな意気込みに昇華できれば良いのだが、劣等感によって自らを過小評価し相手を過大評価して萎縮してしまえば勝ち目はない。
シメオネがアトレティコ・マドリーの監督に就任しリーグ優勝を成し遂げると「3強時代」と呼ばれるようになった。CLでも勝ち上がって欧州の強豪の一つになった。だが、2度のCLファイナルで待ち構えていたレアル・マドリーには、いずれも涙を呑まされている。内容では上回り、アディショナルタイムまでビッグイアーに手をかけていながら敗れている。その苦い記憶は今もシメオネの脳裏に刻まれ、采配にネガティブな影響を与え続けているように見える。……
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。
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