ルカ・モドリッチ、マテオ・コバチッチを筆頭に多くのタレントを輩出してきたディナモ・ザグレブの下部組織で、ユニークな出世株が登場した。16歳でバルセロナのカンテラからやって来たダニ・オルモだ。ディナモ経由でRBライプツィヒにステップアップしたスペイン代表MFの成功は、新たなキャリアプランとして注目されている。
スペイン代表やRBライプツィヒでの活躍から注目を浴びるMFダニ・オルモに関し、「バルセロナのカンテラ出身」という肩書きばかりが強調されることに私は失笑を禁じ得ない。10歳で下部組織「ラ・マシア」に入団した彼を6年間育てたのは確かにバルセロナだが、そこから6年間かけて「サッカー選手」として仕上げたのはディナモ・ザグレブだ。実際、彼のプレー一つひとつにディナモのDNAが息づいている。
まさに理想的!相思相愛のオルモとディナモ
「ディナモのサッカーがバルセロナと異なるのは当然だけど、あらゆることをディナモで学ぶことができた。プレースタイルについてはどちらの影響も受けている。ただし、フィジカル能力がより要求されるのはクロアチア。簡単に倒されぬよう、デュエルでは常に両足で踏ん張る必要があるんだ」
2019年11月に本人にインタビューした際の言葉だ。ウイングの経験しかなかった16歳の少年に、ディナモのコーチ陣はインサイドハーフの適性を見抜いてコンバート。ディナモ卒業生に特徴的なユーティリティ性を手に入れた。入団当初はスペイン語しか話せなかったものの、難解なクロアチア語をマスターした上に英会話も習得。18歳を迎えた入団3年目にトップチームでレギュラーを奪うや、ELやCLといった国際舞台でも存在感を示し、U-21欧州選手権では母国優勝と五輪出場権獲得の原動力となった。A代表デビューわずか3分で初ゴールを決めたのもディナモ時代の出来事だ(EURO予選マルタ戦、2019年11月15日)。
お互い地中海沿岸のお国柄もあって、スペイン人とクロアチア人の親和性は高い方だろう。オルモ本人に両国のメンタリティの違いを尋ねると、こんな気づきを口にしていた。……
Profile
長束 恭行
1973年生まれ。1997年、現地観戦したディナモ・ザグレブの試合に感銘を受けて銀行を退職。2001年からは10年間のザグレブ生活を通して旧ユーゴ諸国のサッカーを追った。2011年から4年間はリトアニアを拠点に東欧諸国を取材。取材レポートを一冊にまとめた『東欧サッカークロニクル』(カンゼン)では2018年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞した。近著に『もえるバトレニ モドリッチと仲間たちの夢のカタール大冒険譚』(小社刊)。