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育成改革から10年の果実。「1-0のカルチョ」の終焉

2021.02.13

2016年からイタリア代表育成年代統括コーディネーターを務めるマウリツィオ・ビシディが育成年代を舞台に積み上げてきた改革が、様々なところで大きな果実を実らせつつある。育成年代代表で育った選手がセリエAやA代表で頭角を現し、彼が導入した新たなフィロソフィとゲームモデルがA代表にまで一貫して導入され、ピッチ上で確かな結果を出し始めている。それだけではない。セリエAにおいても「戦術パラダイムシフト」が明確な形で起こりつつある。

 育成年代からA代表まで、代表レベルで起こっていることは、マウリツィオ・ビシディがフットボリスタ第82号のインタビューで詳細に語ってくれた通り。マンチーニ率いるA代表は、2019年に行われたEURO2020予選10試合を全勝でクリアして本大会に駒を進め、その本大会が延期となった2020年も、9月から11月にかけて行われた第2回UEFAネーションズリーグでオランダ、ポーランド、ボスニアとのグループを1位通過、来秋行われるファイナル4進出を果たした。チームの中では、GKジャンルイジ・ドンナルンマ、CBアレッサンドロ・バストーニ、MFニコロ・バレッラ、サンドロ・トナーリ、マヌエル・ロカテッリ、露レンツォ・ペッレグリーニ、FWニコロ・ザニオーロ、モイゼ・ケーンといった、育成年代代表で新たなゲームモデルを経験してきた新世代が、徐々に主役の座を占めつつある。

 育成レベルで地道に進められてきた変革が、A代表という「陽の当たる場所」にまで波及し、プロジェクトとして一気通貫を果たしたことは、イタリアサッカーそのもののメンタリティや価値観に小さくない影響を及ぼすことになるはずだ。ドイツでユルゲン・クリンスマンとヨアヒム・レーブが、スペインでルイス・アラゴネスが果たした国レベルのサッカー観をアップデートするスイッチが、イタリアでも押されたと言っても間違いではないだろう。幸か不幸か、2021年には延期されたEURO2020、続く2022年にはカタールでのW杯と、その正否が問われる真剣勝負の舞台が2年続けてセットされている。代表レベルでのイタリアの未来は、その結果によって大きく変わることになるのだろう。

大幅に増えたセリエA平均得点

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セリエA

Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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