長らく育成年代をリードしてきたドイツ。ところが、近年その隆盛に少しずつ陰りが見られている。危機感を覚えたドイツサッカー連盟(DFB)は改革に着手。“未来のためのプロジェクト”を発足するとともに、その一環として育成年代のリーグ再編を発表した。なぜ改革が必要なのか、そしてどんな狙いがあるのか。そのビジョンを探る。
2020年10月、2021-22シーズンを最後にU-17およびU-19年代のブンデスリーガを廃止することが伝えられた。現行のフォーマットでは、それぞれ地域ごとに北・北東部、南・南西部、西部の3つに分けてリーグ戦が行われている。各リーグの1位と3リーグの2位の中で最も優れた成績の1チームの計4チームでトーナメント形式のプレーオフを行いドイツ王者を決定していたが、この形式も変更されることになる。
ただ、現在U‒17やU‒19ブンデスリーガを戦うアマチュアクラブから強い反発が出ており、話し合いが続いている。育成およびA代表運営の責任者を務めるヨティ・シャツィアレキシオウは、「具体的な成果が出たら、公式に発表することになる」とドイツメディアの質問に答えている。
同氏は、選手や大人たちの“ブンデスリーガ”というステータスへのこだわりが、育成年代に弊害をもたらしていることを指摘する。毎年NLZ(DFBがライセンスを交付する育成機関)に所属する選手の3%だけがプロになれる厳しい世界。だが、「ブンデスリーガという名前自体が、選手たちにプロになれるという誤った期待を持たせてしまう。実際のブンデスリーガとはレベルがかけ離れているにもかかわらずね。あらゆる手を使ってブンデスリーガに留まるために、結果を残すためだけのサッカーをすることになってしまっている」と、常にプレッシャーにさらされる選手たちの成長の停滞を感じていることを明かしている。……
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。