公式戦280試合中152試合でクリーンシート、4季連続のリーグ最少失点――。2014年夏の加入以降、アトレティコ・マドリーの堅守を支え続けている絶対的守護神、ヤン・オブラク。世界最高GKとの呼び声も高い彼の隠れた凄みを、GK分析の専門家であるレネ・ノリッチ氏に解説してもらった。
2021年現在、世界で最も優秀なGKは誰か。2020年のFIFA最優秀GKこそマヌエル・ノイアーが受賞したが、その問いにヤン・オブラクと答えるサッカーファンも少なくないだろう。筆者もその1人だ。近年GKのオフェンスアクションに目を奪われがちだが、GK本来の仕事、ゴールディフェンスに関して言えば、アトレティコ・マドリー守護神の右に出る者はいない。唯一無二とも言っていい彼のゴールディフェンスの素晴らしさはどこから来ているのか。
オブラク自身は『FIFA.com』のインタビューで次のように語っている。
「写真映えするめいっぱい体を伸ばしたセーブよりも、 『一見すると簡単に見えるセーブ』の方が GKにとって難しいことがある。そう見えるのはポジショニングに関係している」
もちろん息をのむスーパーセーブは見る者を魅了する。しかし、オブラクのゴールディフェンスの真髄は他にある。彼の言う「一見簡単そうだが難しいセーブ」、そしてそれを実現する彼のポジショニングについて、より詳細に分析していきたい。
「正しい立ち位置を取ればプレーが簡単になる」
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Profile
レネ ノリッチ
1994年生まれ、東京都出身。少年団チームにGKコーチがいたことがきっかけでゴールキーパーをプレーし始める。ゴールキックを敵陣ペナルティエリア内まで蹴り込んでいた経験あり(小6)。2018年頃からゴールキーパーのプレー分析記事をブログやnoteに載せ始める。スタジアムでサッカー観戦する場合、GKのウォーミングアップから見始める。好きな選手はヤン・ゾマー、ニック・ポープ。