2021年1月15日、ウェイン・ルーニーがダービー・カウンティ(イングランド2部)で監督業に専念するため、その輝かしい選手キャリアにピリオドを打った。1985年10月24日生まれ、イングランド代表でも120試合53得点(03-18)を記録したFWは、地元のエバートンで02年8月に16歳でトップチーム初出場を果たし、04年に移籍したマンチェスター・ユナイテッドでは13季で5度のリーグ優勝や07-08のCL制覇などに貢献。17-18は再びエバートン、18年夏からはアメリカのDCユナイテッドで1年半プレー後、20年1月に選手兼コーチとしてダービーに加入し、11月下旬より暫定監督を兼務していた。イングランド“黄金世代”の中でも「本当のワールドクラス」だった男の現役時代について、その歩みを現地で見続けてきた英国在住20年以上の山中忍さんが追想する。
才能を称える際に用いられる英語の1つに“natural”がある。難しいことでも、ごく自然にできてしまうことを意味する最大級の褒め言葉だ。去る1月15日、2カ月前からFWと暫定監督を兼任していたダービー・カウンティ(イングランド2部)で、指揮官の仕事に専念することになったウェイン・ルーニーの現役時代にも、この表現がふさわしい。“ナチュラル”なフットボーラーであったからこそ、記録にも記憶にも残る偉大な選手として、18年間に及ぶプロキャリアの幕が降ろされた。……
Profile
山中 忍
1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。