フットボリスタでは、しばしば難解な専門用語が登場することもあり、「難しい」という感想をいただくことがある。そこでイラストを交えて、欧州サッカー界で使われている新しい戦術用語を紹介してみる「戦術図解シリーズ」。その第二弾は「ゼロトップ」だ。
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先日寄稿した『初心者向け戦術図解シリーズ。CL決勝から新しい戦術用語を知ろう!』が「footballista 2020年人気記事ランキング戦術部門」の3位に輝きました。お読みいただいた皆様には、この場を借りて御礼申し上げます。
そこで今回は「シリーズ化」の第二弾として、頻繁に聞く戦術用語の中から「ゼロトップ」を選定。ぜひ、明日からスターバックスでコーヒーを楽しみながら、戦術談義に花を咲かせてみよう。可愛くて癒される動物のイラストとして、今回はペンギンのイラストを採用しました。季節的にも、南極に生息するペンギンは寒い冬にピッタリです。ただし、俳句の世界ではペンギンは季語としては使えないそうです(本筋とはまったく関係ない余談ですが)。
どこよりも簡単な「ゼロトップ」の歴史
運転免許の筆記試験では、○×問題が使われている。「踏切を通過する時は、なるべく急いで通過する」という問題と同じくらい頻出、そしてひっかかりがちなのが「ゼロトップを発明したのは、ペップ・グアルディオラである」という問題である。この正解だけでも、ぜひ覚えて帰っていただきたい。
正解は「×」だ。「ゼロトップ」の起源は諸説あり、今回は詳細なフットボール史については割愛させていただくが、グアルディオラ本人が「マジック・マジャール」と呼ばれたハンガリー代表チームからアイディアを得たことを認めている。別の例としては、ルチャーノ・スパレッティ期のローマだ。当時のローマでは、フランチェスコ・トッティを前線に置いた「ゼロトップ」が採用されている。[4-2-3-1]の前線にトッティを起用したシステムは、セリエAを席巻した。
一方で、上述の○×問題が成立するように「ペップ・グアルディオラ期のバルセロナ」が「ゼロトップの再発明」において果たした役割は大きい。カタルーニャの青年監督は、10-11シーズンのCL決勝でリオネル・メッシを前線に配置するゼロトップの採用を決断する。名将サー・アレックス・ファーガソン率いるマンチェスター・ユナイテッドにおいて、対人戦最強を誇ったネマニャ・ビディッチとリオ・ファーディナンドのCBコンビを無視してしまう戦術は、人々の度肝を抜いた。……
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Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。