ホームアドバンテージは消えたのか? 19-20欧州4大リーグにみる無観客試合の影響
2020年7月、米紙『ニューヨーク・タイムズ』に掲載されたある記事が世界中のサッカーファンの間で大きな話題となった。各データ会社が2019-20シーズンのブンデスリーガで行われた無観客試合を分析した結果、コロナ禍以前の有観客試合と比較してホームチームの勝率が10%、ホームチームの1試合あたりの得点数が0.3減少したというのだ。では、プレミアリーグ、リーガ、セリエAを加えた欧州4大リーグ全体だと、いわゆる「ホームアドバンテージ」にどのような変化が見られるのか。スポーツデータの統計的解析を専門とする名城大学理工学部の小中英嗣准教授に読み解いてもらった。
統計が示すホームアドバンテージの存在
スポーツにおける「ホームアドバンテージ」は「ホームチームが一貫してアウェイチームよりも良い成績(勝率や得失点など)を達成すること」と定義される。ざっと統計を取ってみれば、その存在に疑わしいところはない。
図1はサッカーデータサイト『worldfootball.net』に掲載されている100前後の国と地域で2010年から2019年春に開催されたトップディビジョンのリーグ戦における、試合数(横軸)とホームチームの平均得点/平均失点(縦軸)を示したものである。明らかにホームチームの得失点比は1.0を超えており(ホームチームの合計の得失点は26万159:19万7531で得失点比は約1.3)、総試合数17万3492のうち、ホームチームの勝:分:負の数は7万9648:4万3957:4万9887である。
この傾向はプレミアリーグ、リーガ、ブンデスリーガ、セリエA、リーグ・アンの欧州5大リーグに限定してもあまり変わらない(試合数=1万6434、ホームチームの勝:分:負=7550:4154:4730、ホーム得点:失点=2万5475:1万9151)。一方、赤丸で示した日本のJ1リーグは非常にホームアドバンテージがマイルドとなっている。リーグの歴史の短さ、発達した移動手段、国内の環境・文化・食事の均一性などの要因が私見としては思いつくものの、追加で検討が必要な問題であるため本稿では深く掘り下げないが、世界的な基準で考えると「ホームが相当有利」であることは間違いない。
ホームアドバンテージの要因は?
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Profile
小中 英嗣
名古屋市出身。理工系学部の大学教員。専門は数理最適化を伴うシステム制御理論。趣味のスポーツ観戦と実益を兼ね、2015年ごろからはスポーツデータ分析、特にランキング設計、結果予測、選手評価など新しい指標の開発などを研究課題として活動中。名古屋グランパスを応援しています。