2020シーズン限りでの退任が発表されたセレッソ大阪のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督。一部メディアでは「守備的」という評価を理由に同クラブが決断を下したと報じられているが、その論調に異を唱える元選手がいる。東京ヴェルディ時代にロティーナ監督の指導を受けた田村直也氏だ。元教え子の目に、恩師の哲学はどう映っているのだろうか?
私の中でロティーナ監督の指導法は、「スペインでの指導を日本のサッカー、日本人の文化や性格向けにアレンジした指導」という表現が最もしっくりくる。自分の常識をすべて押し付けるのではなく、日本人の文化や生活習慣を受け入れ、リスペクトを持ちながら最も効果的な策を打つ。
そんなロティーナ監督の指導を受けた2年という期間は、私にとっての財産であり、ともに同じ目標のために戦った知恵と友情は、その後の私のキャリアに大きな影響を与えた。端的に言うと、彼は「個」に特徴がある海外では「和」を意識させ、日本では「和」の中から生まれてくる「個」の特徴をとても大切にする。同時に、組織の中で輝く個の能力を見逃さない監督だ。
そしてロティーナ監督は「博打」より「確率」を選ぶリアリストでもある。確率の高い選択肢を選ぶことを好み、質にこだわる。守備時では「一か八か」を最も嫌う。これらはすべて試合に勝つ確率を高めるためだ。
玄人好みの戦術や交代策が冴え、大勝と大敗の少ない安定した戦いぶり。一見すると派手さのないロティーナ監督だが、彼の下でプレーした元選手として最初に伝えたいのは、実は攻撃が大好きであるということだ。
トレーニングで目にしたリアリストの素顔
……
TAG
Profile
田村 直也
東京都多摩市出身。1984年11月20日生まれ。東京ヴェルディ下部組織、中央大学を経て、2007年ベガルタ仙台入団。2014年、東京ヴェルディへ移籍。「株式会社TMFC」を立ち上げ、スポーツ振興と地域貢献、震災復興に関わる活動を実施。2019年の現役引退後は、仙台市で解体・建設業を営む株式会社エルエスシーに入社。営業・広報として社業に勤しむ一方で、サッカー解説者としてTVや新聞、SNSなどで活躍。プロとしての豊かな経験と独自の戦術眼で、チームの垣根を越えてサッカーファンの支持を得ている。