リーグ戦では消化試合の差こそあるものの11戦して4敗を喫し9位、CLでは最終節でユベントスに屈しGS首位の座を明け渡すなど、厳しい戦いが続いているクーマン体制下のバルセロナ。指揮官はいったいどのようなチーム作りを目指しており、どんな課題にぶつかっているのか。チームのゲームモデルを分析する。
近年のバルセロナを眺めていると、単にピッチ内における不調に留まらずクラブ全体としてのあり方が揺らいでいるように思える。ある意味では“バルサらしい”とも言えるような状態が続いているが、捲土重来を期して招へいしたロナルド・クーマン政権でも残念ながら苦しい現状には変化が見られない。
クーマンの基本的な狙いは明らかだった。「今のバルセロナに足りないのはインテンシティだ」と明確に言い切り、守備の強度に留まらず攻撃にも縦への速さを加えたバーティカルなスタイルを志向。少なくとも開幕から数試合はそのスタイルもおおむね良く機能し、クレと呼ばれるバルセロナファンの多くがこれまでよりも少し明るい未来を期待したことだろう。しかし、ジューレン・ロペテギ率いるセビージャによって明確な対策を施されたのを契機に、徐々に対策を上回ることができずに勝ち点を落とすゲームが増えていった。ここまでの結果を見てもリーガでは9位、CLでも監督キャリア1年目のアンドレア・ピルロ率いるユベントス相手に完敗を喫してのGS2位通過(12月11日現在)と、蓋を開けてみれば低空飛行を余儀なくされている。今回の記事では、クーマン率いる現在のバルセロナのゲームモデルを大雑把に確認しつつ、これまでの数年から何を変えようとし、その上でバルセロナはどのような問題を抱えているのかについて論じていこう。……
Profile
山口 遼
1995年11月23日、茨城県つくば市出身。東京大学工学部化学システム工学科中退。鹿島アントラーズつくばJY、鹿島アントラーズユースを経て、東京大学ア式蹴球部へ。2020年シーズンから同部監督および東京ユナイテッドFCコーチを兼任。2022年シーズンはY.S.C.C.セカンド監督、2023年シーズンからはエリース東京FC監督を務める。twitter: @ryo14afd