風間メソッド 13 子どもは大人のおもちゃじゃない
【無料】『30秒で子どもの未来は変わる!
勝手に才能が伸びる風間式育成メソッド』全文公開#13
「伸ばすプロフェッショナル」風間八宏監督が、親・指導者・子ども、それぞれの立場からのよくある悩みに質疑応答形式で答え、育成の“誤解”を解いていく書籍『30秒で子どもの未来は変わる! 勝手に才能が伸びる風間式育成メソッド』を、1話ごとに全文公開! 「サッカーは教えてもうまくならない」「誰よりも自分に期待すればいい」「本気にさせるのがいちばんの上達法」など、本質を突く風間監督ならではのユニークなメッセージの数々を、ぜひ受け取ってほしい。
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質問者:子どもに戦術を教えていいか悩むコーチ
指導者「私はジュニア世代の指導をしているんですが、『子どもたちにどこまで戦術を教えるべきなのか』ということで悩んでいます」
風間「ちょっと聞きたいんですが、“戦術”っていうのは何だと思いますか?」
指導者「え? 戦術ですか……。ポジションだったり、システムだったり、動き方だったり……」
風間「“戦術”と言うと、多くの指導者が選手を将棋のコマのように考えてしまう。戦術ボードに選手を配置して、ここを攻めようとか、こういう動きをしようとか、そんなことばかり言っている。将棋には歩、飛車、王などの役割があります。でも、選手というのは必ずしも役割には当てはまらないし、サッカーで同じように、選手をチームの戦術に当てはめてしまうのは危険なことです」
指導者「子どもには戦術は教えない方がいいということでしょうか?」
風間「戦術という言葉をどうとらえるか。サッカーで戦術と言えば、チーム、グループ、個人という単位がある。その中で一番大事なのは何かと言うと、個人の戦術なんです。個人が集まってチームになっていくわけですから、個人が上手くならなきゃいけない」
指導者「個人の戦術というのは、どういうことですか?」
風間「まず技術を教えなければいけない。ボールをどうやって止めるのか、どこに止めるのか。どこに狙って蹴るのか、狙ったところに蹴るにはどうするのか。止める・蹴るというのはみんな基礎、基礎と言うんだけれども、そうじゃない。技術も戦術なんです」
指導者「技術も戦術……」
風間「そう。技術が上がってくれば、その選手も見えるものが変わってくる。今までは出せなかったパスコースが狙えるようになるし、相手との距離が近くてもプレーできるようになる。そういうのが積み重なって戦術になっていく。それから、動きも教えなければいけない。どこに、どうやって動けば、フリーになるのか。紙の上だと、相手の選手が動けばここにスペースができるとかやっているけど、本当にそうなのか。相手が1メートル横にいたってスペースはできるんです。そのスペースを見つけるためにも、そこにパスを通すためにも、個人の戦術がなければいけない。それを飛ばしてチームの戦術というのは、本当はあり得ない話なんです」
指導者「では、個人の戦術をどうやって教えていけばいいのでしょうか?」
風間「一番大事なのは、その子どもをよく見ることです。何ができているのか、どんなプレーが得意なのかを、しっかりと観察する。そこから、どうやってアプローチするかを決めていく。例えば止める・蹴る・運ぶ・外すって言ったって、どういう技術なのかをわかっていないと見ることができない。全員に同じメニューをやらせたとしても、全員が同じペースでうまくなるわけじゃない。声のかけ方だって変わってくる」
指導者「子どもと向き合えということでしょうか?」
風間「そうです。人に何かを教えるっていうのは、ものすごく大変なことで、ものすごく難しいことで、ものすごく責任があること。それなのに、みんな簡単に教えられると思っている。この戦術をやれば、必ず強くなるとか、そんなのあるはずがないんです」
指導者「風間さんでも教えるのは難しいと思ってるなんて……」
風間「子どもを大人のおもちゃにしちゃいけない。子どもをしっかり見ていれば、何をすべきかというのは、おのずと見えてくるはずです。チームでやることをかっちりと決めてしまった方が、もしかしたら目の前の試合には勝てるかもしれない。だけど、子どもを教える人間というのは、試合に勝ったか負けたかで一喜一憂していてはダメなんです」
まとめ
・選手を将棋のコマのように扱わない ・チームの戦術の前に個人の戦術 ・とにかく子どもをよく見る
30秒で子どもの未来は変わる! 勝手に才能が伸びる風間式育成メソッド
- 01 親は先回りしてはいけない
- 02 子どものサッカーに“ミス”はない
- 03 子どもの試合は感謝しながら見る
- 04 天狗になるのは当たり前
- 05 サッカー経験がある自体が“ない”
- 06 サッカーはどこでやっても上手くなれる
- 07 子どもから見返りを求めない
- 08 家に帰ってきてサッカーの話をしているか
- 09 セレクションはしょせん人が選ぶもの
- 10 海外で学べるのはサッカーだけじゃない
- 11 シューズは自分のお金で買わせる
- 12 サッカー以外もどんどんやればいい
- 13 子どもは大人のおもちゃじゃない
- 14 10年後に勝てばいい
- 15 選手の顔を見ればメニューが決まる
- 16 練習では失敗を引き出す
- 17 やりたくないことをやらせる
- 18 上手くなりたいと飢えさせる
- 19 基準を作ってあげる
- 20 「本気」を引き出す
- 21 本当の意味で平等に扱う
- 22 子どもの成長の邪魔をしない
- 23 トラブルがあった時は子どもに任せる
- 24 指導者は孤立しない方がいい
- 25 ボールを蹴る環境は自分で作る
- 26 監督の言うことなんて聞くな
- 27 自分のやりたいことを主張しろ
- 28 サッカーはやめてもいい
- 29 “2人の自分”を作れ
- 30 一番出られなさそうなところを選ぶ
- 31 言葉が通じないのは面白い
- 32 プロになりたいと思うな
- 33 サッカーにポジションはない
- 34 チームのことなんて考えるな
- 35 ボールを完全に止める
- 36 シュートは打つまでに“2つ”を決める
Illustration: Miyuki Demura
Profile
北 健一郎
1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。『ストライカーDX』編集部を経て2009年からフリーランスに。サッカー・フットサルを中心としてマルチに活動する。主な著書に『なぜボランチはムダなパスを出すのか』『サッカーはミスが9割』。これまでに執筆・構成を担当した本は40冊以上、累計部数は70万部を超える。サッカーW杯は2010年の南アフリカ大会から3大会連続取材中。2020年に新たなスポーツメディア『WHITE BOARD』を立ち上げる。