REGULAR

風間メソッド 01 親は先回りしてはいけない

2020.07.02

『30秒で子どもの未来は変わる!
勝手に才能が伸びる風間式育成メソッド』全文公開#1

「伸ばすプロフェッショナル」風間八宏監督が、親・指導者・子ども、それぞれの立場からのよくある悩みに質疑応答形式で答え、育成の“誤解”を解いていく書籍『30秒で子どもの未来は変わる! 勝手に才能が伸びる風間式育成メソッド』を、1話ごとに全文公開! 「サッカーは教えてもうまくならない」「誰よりも自分に期待すればいい」「本気にさせるのがいちばんの上達法」など、本質を突く風間監督ならではのユニークなメッセージの数々を、ぜひ受け取ってほしい。

今すぐ全編を読みたい方は↓

質問者:子どものやる気を感じない親

「風間さん、うちの子どもはサッカーをやってるんですけど、『上手くなりたい」と本当に思っているのかわからないんです。できるだけ声をかけてあげているんですが、何を言っても反応が薄いというか、やる気が見えてこないんです。子どものやる気を引き出すにはどうすればよいのでしょうか?」


風間「とりあえず、親がやる気にならないことでしょうね」


「親がやる気にならない……。どういうことですか? 子どものモチベーションを引き上げてあげるのも、親の重要な役割じゃないですか! 」


風間「そういう考え方を持っている人は多いですよね。子どものサッカーの試合を見に行くと、子どもよりも親のほうが熱中していて、誰がやってるのかわからないことさえある」


「それは子どもが頑張っているのを応援したいと思っているからですよ!」


風間「親がやる気になることは問題ありません。でも、親にやれと言われたから頑張るかというとそういうものではないですよね。子どもの立場になって考えてみてください。

 例えば、子どもが『お母さんが忙しそうだからお皿洗いを手伝おうかな』と思っていたとします。これは自発的な行動です。だけど、お母さんに『忙しいんだから皿洗いぐらいやってよ』と言われたらどうでしょうか? 子どもは『今やろうと思ってたのに』となりますよね。せっかく自分からやろうと思っていた行動でも、親から言われてやらされている行動になった時点で、やる気はなくなってしまうんです」


「確かに、そうかもしれません。だけど、親は子どもが自分からやる気になるのを黙って見ていればいいのでしょうか?」


風間「子どもというのは、自分が好きなことに対しては夢中で取り組むもの。そうですよね? 自分が気に入ったおもちゃがあれば、大人が『もう止めなさい』と言ってもずっと離さないじゃないですか。サッカーに夢中になれば、子どもは勝手に上手くなろうとしていく。親からすれば遠回りだと思うかもしれませんが、そうするのが結果的に一番の近道なんです。親が何かを言うのではなく、子どもが何かを言ってくるまで待つこと。それが子どものモチベーションを上げる一番の方法です」


「だけど、子どもよりも大人のほうが経験があるわけですし、子どもが困っていたら手を差し伸べてあげることは大事なんじゃないかと思うんですが……」


風間「子どもが困っているときは成長のチャンスです。自分で悩んで、考えて、行動をすることで大きくなる。それなのに大人が『まだ子どもだから』『何もできないから』と先回りして解決策を与えてあげたら、どうなるでしょうか?」


「子どもは困ったら親が助けてくれると思ってしまう……」


風間「そうです。子どもにとってせっかくの成長機会を奪ってしまうことになる。それをずっと繰り返していけば、子どもは自分で考えようとせず、すぐに答えを求めるようになっていくでしょう」


「ということは、大人はサポートしないほうがいいのでしょうか?」


風間「サッカーはピッチの中で自分自身が考えてプレーするスポーツです。試合になったら、たくさんの問題が発生します。でも、ピッチの中では誰も助けてはくれない。親に聞きにいくこともできない。自分自身で問題を解決できる能力があるかどうかは、サッカー選手にとって重要な要素です」


「子どもがうまくなるためには親のサポートも必要だと本にも書いてありましたけど……」


風間「子どもが『お父さん、もっと上手くなりたい』『こういうことを教えてほしい』と言ってきたら親は関わっていけばいいと思います。でも、それをしないで親が先回りするのは、最もやってはいけないことの一つです」

まとめ

・親だけがやる気になると子どもはやる気を失う
・サッカーは自分で解決する能力が重要
・子どもが「やりたい」と言ってくるまで待つ

30秒で子どもの未来は変わる! 勝手に才能が伸びる風間式育成メソッド

Illustration: Miyuki Demura

footballista MEMBERSHIP

Profile

北 健一郎

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。『ストライカーDX』編集部を経て2009年からフリーランスに。サッカー・フットサルを中心としてマルチに活動する。主な著書に『なぜボランチはムダなパスを出すのか』『サッカーはミスが9割』。これまでに執筆・構成を担当した本は40冊以上、累計部数は70万部を超える。サッカーW杯は2010年の南アフリカ大会から3大会連続取材中。2020年に新たなスポーツメディア『WHITE BOARD』を立ち上げる。

RANKING

TAG