REGULAR

育成年代コーチが直面した「サッカーのない生活」

2020.05.16

中野吉之伴の「育成・新スタンダード」第7回

ドイツで15年以上にわたり指導者として現場に立ち続け、帰国時には日本各地で講演会やクリニックを精力的に開催しその知見を還元。ドイツと日本、それぞれの育成現場に精通する中野吉之伴さんが、育成に関する様々なテーマについて提言する。

第7回は、育成年代を指導するコーチはこのコロナ禍とどう向き合い、どんな活動を行っているのか。その実情を明かす。

 ドイツで新型コロナウイルス対策で外出制限が出されてから2カ月が経つ。

 連邦制のドイツでは、首相に全国統一で禁止令を発令する権限はない。そのため地方政府同士の足並みをそろえながら、全国的に外出制限をかけられるように調整する必要があった。アンゲラ・メルケル首相は3月22日に各ドイツ州首相と危機対策会議を行い、連邦政府と各州政府の間で合意したうえで新たなガイドラインを発表。

 ミュンヘンにある日本総領事館からは法令の日本語訳がメールで知らせられたが、どれも非常に細かく制限されたものになっている。

1. 同居家族等以外の他人との接触は絶対に必要な最低限とすること。
2. 公共空間においては他人との距離を必ず最低1.5m、可能であれば2m以上とること。
3. 公共空間における滞在は、単身か、または家族以外の1名、または家族の同伴に限り認められる。
4. 職場への通勤、緊急時ケア(託児,高齢者介護等)、買い物、通院、試験や会議等重要な日程、他者の支援、個人によるスポーツ、屋外での新鮮な空気を吸うための運動やその他必要な活動のための外出は引き続き認められる。
5. グループによるパーティーは、公共の場所か私的な空間(住居)かを問わず許容されない。秩序局または警察が取り締まり、違反行為には罰則が適用される。
6. すべての飲食店は閉鎖。ただし配達サービスや持ち帰り等により、個人が自宅で飲食するための料理の販売は例外。
7. 理髪業、美容サロン、マッサージ業、タトゥー業など、身体のケアに関わるサービス業はすべて閉鎖。ただし、医療上必要な治療は引き続き認められる。
8. 人々との接触があり得るすべての現場については、公衆衛生に関する規則を守り、従業員や訪問客に対する効果的な保護措置を実施することが重要である。

 こうした規則はすぐに徹底され、警察官と役所の担当が街中を巡回し、疑わしき現場を見つけたら注意・警告、時には厳しい罰金が科されることもある。ちょっとくらいなら大丈夫と思って友人家族らを誘い中庭でバーベキューパーティをしていたら、あっさりとばれてしまい1万5000ユーロ(約225万円)の罰金を命じられた人もいたとか。

 さて、そんな厳しい社会情勢の中でスポーツ界もすべての活動が閉ざされてしまった。僕の暮らすフライブルクでは3月13日からすべての試合が中止に。活動は自粛ではなく、禁止だ。スポーツ施設は立ち入り禁止となり、違反した場合の罰金もなかなかに高額設定されていた。……

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Profile

中野 吉之伴

1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。

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