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気鋭の若き戦術分析官に聞く「CLに見る戦術進化の最前線」

2020.05.08

TACTICAL TALK~進化型サッカー対談~

雑誌フットボリスタの連載「TACTICAL FRONTIER」でサッカーの“戦術革命”について論じている結城康平が、SNS等を通じて交流を持っている気鋭の指導者やアナリストらを招き対談。今この瞬間にもアップデートされている最先端理論から旬なトピックまで、現場レベルの“最前線”を聞き出す。

第1回の対談者は、マケドニア人戦術分析官ブランコ・ニコブスキ。現在はイタリアで研鑽を積む28歳に、CLの舞台で見えた戦術の最前線について見解を語ってもらった。

ラウンド16までの所感

結城「最初に、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?」

ニコブスキ「ブランコ・ニコブスキと申します。28歳で、出身国はマケドニアです。UEFA-Aライセンスを保有しており、戦術分析官としても働いています。現在はイタリアに在住しており、指導者としての勉強も続けています」

結城「今季のCLでベスト16に残ったチームで、戦術的に最も優れていると思うクラブについて教えてください」

ニコブスキユリアン・ナーゲルスマンが率いるRBライプツィヒですね。試合によって陣形を柔軟に使い分けることはもちろんですが、彼のゲームモデルの特徴として着目すべきなのは『ポジショナル・ポリバレンス』(位置的な万能性)です。所属する多くの選手が『少なくとも2つのポジションでプレーすることが可能』という特性を生かし、戦術システムの切り替えを繰り返します。1人の選手がポジションを移動することで[3-4-2-1]を[4-3-3]に変化させ、さらに発展させることで[4-2-2-2]にも可変します。当然、すべての動きは相手のシステムと連動しています。現代フットボールにおいて、ポジションの流動性というのはすべての戦術における土壌です。その最先端こそ、ナーゲルスマンのチームなのです」

クラブ史上初の8強進出を決めたRBライプツィヒ

結城「ナーゲルスマンは、私やニコブスキさんと近い世代ですね。CLで最先端の戦術的流動性を誇るチームが“最年少監督”に率いられているのは示唆的です。CLは多くのトッププレーヤーが競い合う場所ですが、注目選手は誰でしょう?」

ニコブスキ「28歳になり、全盛期を迎えているチアゴ・アルカンタラは別格ですね。ケガが多い選手でしたが、そのポテンシャルを十二分に解き放ったパフォーマンスを見せています。プレーメイカーとして的確にゲームをコントロールし、チェスの名手を想起させるような理知的にゲームを組み立てる。DFラインを助けるタイミングも絶妙で、ライン間に侵入してボールを受ける技術にも長けており、長いボールを散らすことも可能です。運動量も豊富で相手のマークを外すのも巧いので、マンツーマンで封じられることも少なく、そこも特徴的ですね。

 同時に期待の若手として、アルフォンソ・デイビスにも注目しています。左サイドのレーンを1人で制圧することが可能な運動量とスピードに加え、クロスやフリーランも抜群。チームに幅を与えるSBとしては、バンジャマン・メンディ(マンチェスター・シティ)に匹敵するタレントに成長するかもしれません。ポジショニングには改善の余地がありますが、精神的にも強い選手です。守備面の技術もトップレベルには遠く、スペースの認知能力にも不安が残りますが、欧州トップクラスの原石でしょう。

ニコブスキ氏が名前を挙げたチアゴ・アルカンタラ(中央)とアルフォンソ・デイビス(右)

結城「グループステージでも、興味深いゲームが多かったかなと思います。いくつか、戦術的に優れていたチームを教えてください」

ニコブスキ「チェルシー、アヤックス、バレンシア、リール。この4チームが同居したグループHは特に面白かったですね。アヤックスのポジショナルプレーを基盤としたパスワーク、ランパード・チェルシーの戦術的柔軟性、バレンシアの圧縮された[4-4-2]。彼らはグループステージの宝にたとえられるべきだったと思います」

ポジショナルプレーという潮流

重要視されている要素の1つが『相手にとって、予測の難しい局面を作り出す』こと……

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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