何のためのフニーニョなのか。見逃さないでほしいこと
中野吉之伴の「育成・新スタンダード」第6回
ドイツで15年以上にわたり指導者として現場に立ち続け、帰国時には日本各地で講演会やクリニックを精力的に開催しその知見を還元。ドイツと日本、それぞれの育成現場に精通する中野吉之伴さんが、育成に関する様々なテーマについて提言する。
第6回は、ドイツではサッカー連盟が公式のミニトーナメント開催を主導するなど普及が進んでいるフニーニョについて。3対3をはじめ独自の形式に目がいきがちだが、形にばかりとらわれては見えなくなってしまう目的や意義、本質を、現場目線から伝えてもらう。
フニーニョってなんだ?
さて、みなさんはこう尋ねられたらどう答える?
「フニーニョ? 確か3対3でGKなし。ミニゴール4つでゲーム。シュートゾーンがあって、そこからしかゴールを決められない。サイズは30m×25mくらいだったかな」
その通り。人数、ゴール数、シュートゾーンルール、サイズ、設定に関しては合っている。厳密に言うと、現在オフィシャルに発表されているフニーニョの試合形式は以下になる。
1. 3号球を使用
子どもの成長段階を考えると、4号球でも大き過ぎる。大きいボールを使うと力のない子、体の使い方に慣れていない子は圧倒的に不利になる。
2. ゴールはミニゴールを2つずつ
どちらも狙える。自然と両方のゴールを観察するようになる。GKはなし。
3. 3対3
2つのゴールに対するバランスが取りやすい。4人だと、2-2で左右や攻守に分かれてしまいがち。でも、3人だとそれぞれがFW、MF、DFの役割を担わないといけなくなる。
4. シュートゾーンの設置
ゴール前に運ぶドリブルやパスが必要となり、ゴールに向けての動きが活発になる。
5. スローイン禁止
ボールがラインから外に出た場合はドリブルかパスかを選べる。ファウルスローで細かく指摘されることがなく、パスが出せなくてジッとする必要もなくなる。
6. ローテーションの導入
どちらかのチームがゴールを決めたらそれぞれ選手交代。1人ずつの交代でもいいし、3人一気に交代してもいい。人数に応じて柔軟に対応できる。控え選手は最大2人。
7. ピッチ外からのコメントはNG!
ピッチ外から叫ぶ指導者は必要ない。不必要にプレッシャーをかける保護者もいらない。子どもたちは、1日の流れがわかれば自分たちで全部できる。大人は問題が生じた時だけ顔を出せばいい。
8. サイズは28m×22m
広過ぎず、狭過ぎず。全員がゲームに関われるサイズを目指す。
「なるほどね。でもそのやり方、練習で前から知ってるよ」
そういう指導者も多い。先日、日本に一時帰国した際に茨城県桜川市と和歌山県和歌山市でそれぞれフニーニョ体験クリニックを行ったが、試合形式への質問が多かったのは事実。そして「ああそれなら私がやっているやり方と一緒だ」とか、「僕がどこかで読んだ話と違うな」という答え合わせをされる。確かに内容的には昔からあるものだし、ルール設定としてもそこまで真新しいものではない。“だから”「知ってるよ」と言う。
ただ、そうではないのだ。フニーニョとは、その試合形式が合っているかどうかが大事なのではない。そのルール通りにやればいいわけではない。何を目的とし、なぜ生まれ、どのような哲学の下で発展し、どのように取り組むことが求められているかを理解することが非常に重要だ。
気づかせたのは「ある子ども」
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Profile
中野 吉之伴
1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。