新世代スターの育て方は計画的に。日本の理想モデルが堂安律な理由
喫茶店バル・フットボリスタ ~店主とゲストの蹴球談議~
毎号ワンテーマを掘り下げる月刊フットボリスタ。実は編集者の知りたいことを作りながら学んでいるという面もあるんです。そこで得たことをゲストと一緒に語り合うのが、喫茶店バル・フットボリスタ。お茶でも飲みながらざっくばらんに、時にシリアスに本音トーク。
今回のお題:月刊フットボリスタ2018年12月号
「U-21バロンドール候補に見る新世代スターの育て方」
店主 :浅野賀一(フットボリスタ編集長)
ゲスト:川端暁彦
子供時代にやるべきは鬼ごっこ?
川端「今回は若手特集ということでしたが、なぜにこのテーマをこのタイミングでセレクトしたので?」
浅野「実はサブタイトルにも入っているのだけれど、U-21バロンドール(トロフェ・コパ)が新設されて、それが12月3日に発表されるので、そのタイミングであらためて若手に注目してみようかなと。最終候補者の10人に堂安律も入っていましたし」
川端「珍しく時事ネタだったわけですね(笑)」
浅野「内容は全然時事ネタじゃないけど(笑)」
川端「ワールドカップを通じて表紙のムバッペさんはすっかり一つのムーブメントになりましたしね。高校生を取材していても彼の名前を挙げる選手は多いです」
浅野「日本の若い選手の意識も自然と変わったんじゃないかな。10代で欧州の一流クラブのレギュラーになるのは特別なことじゃない。高校3年は17歳か18歳でしょ。その時、ムバッペやドンナルンマは……って話ですよね」
川端「それはまさに堂安も話していましたね。『その年でA代表入るなんて凄い』という言われ方自体が違うよね、と。世界では当たり前やん、という」
浅野「もちろん、そこには第1回のバルでも話した『選手の株式化』というビジネス面の話も絡んでくるから複雑なんだけどね。今回はより純粋にピッチ上の『育成』にフォーカスしてみました」
川端「いろんな国の話が出てきたけど、アヤックスの改革の話は興味深かったですね。ベルギーの育成が成功した話にも通じる部分がある。日本も昔はこういう個人練習寄りの部分があったのに、ヨーロッパを真似して、よりチーム練習中心、チームによっては個人練習自体をなくしてしまったわけですが、ヨーロッパの方がより個人を鍛える方向になってきたという」
浅野「戦術的ピリオダイゼーション的な『サッカーはサッカーでしかうまくならない』の理屈はよくわかるのですが、それが一般化した先には、そこからさらに要素を取り出して効率化していくという未来は容易に想像できますよね」
川端「『サッカーでしか』を狭く解釈し過ぎている気はします。子供に関しては変にサッカーに特化せず、たくさんいろんな遊びにトライすべきだとも思いますし。裏山で鬼ごっこを重ねる方が、より良い選手を育てるかもしれませんよ。そして、成長には個人差が極めて大きい。やはり全員一律のメニューでは絶対的に限界があると思いますし」
浅野「特に今の子供、これは日本だけでなく世界的な傾向としてだけれど、外遊びができない環境になってきている。だから、遊びの中で鍛えられた総合的な体力が伸びなくなっているのはどこの国の育成担当も嘆いていますよね。その解決策としても幼少期にいろんなスポーツをやるのはいいかな、と。だから、特集の扉もパリ・サンジェルマンの柔道にしました(笑)」
川端「アヤックスも柔道を採り入れていましたよね。今はどうなんでしょう」
浅野「記事には入れられなかったですが、アヤックスは今も柔道やっているそうです。それも『プラン・クライフ』の個人を鍛える思想の流れです。最初、オランダでも馬鹿にされていたらしいですよ」
川端「日本でもマット運動とか採り入れているチームはありますね。個人的には日本人は独り練習が好き過ぎるところもあって『対人』の要素があった方がいいと思うので、柔道はいいなと思うのですが。まず自分の身体的な機能をしっかり使い切れるようになろうということで。ただ、アヤックスが最初馬鹿にされたように、育成の取り組みの難しいところはまさにそこですよね。やり方が良かったのかダメだったのかの結論が出るのが早くて10年後。しかもそれで選手が出てきたとしても、その施策のおかげだったのか、そうでなかったのかの線引きは難しい」
浅野「それはあるよね。成果の確認ができるまで時間がかかるし、しかも出た成果の理由をどこに求めるかは簡単じゃない。たまたまかもしれない(笑)」
川端「まあでも、ジネディーヌ・ジダンも柔道やっていましたからね。『サッカーはサッカーでしかうまくならない』は、やはり育成においては幻想だと思います(笑)」
浅野「俺はレイモンド・フェルハイエンに直接インタビューしているからフォローさせてもらうけど、サッカーでグラウンドの周りをぐるぐる走ったり、違うポジションなのに同じ練習メニューはおかしい、という現役時代の問題意識がきっかけで、そこは正しいと思うし、トレーニング理論自体を前に進めた発想だったのは確かじゃないかな。ただ、どこまでそこにこだわるかだよね」
川端「『育成』を意識するなら当てはまらないと思いますよ。『育成年代で強いチームを作る』ことを目指すならわかりますが。『走り』にしても、サッカーは88分間ボールに触れないスポーツなので、本当に不要なのかな?というところですよね。もちろん『走りだけ』やるのはナンセンスですが(笑)」
浅野「フェルハイエンも走りの練習自体は『無意味ではない』と言っていました。限界状態まで追い込むことで精神を鍛えられるのも事実だと。ただ、同じことはサッカーのトレーニングでもできるよというのが彼の主張ですね」
川端「グラウンドの外周ランニングとかに限定せず、クロスカントリー的なメニューはもっとあっていいんじゃないかなと思います。それこそ小学生は鬼ごっこでもいいと思いますが。『ボールを使ったトレーニング』にこだわり過ぎるのもどうなのだろう、と。これは『ボールを使ったトレーニング』をやらなくていいとか軽視すべきという意味じゃないですよ、念のために言っておきますが」
育成で「チームの強さ」を重視する危険
浅野「俺の意見は、いろんな流派があっていいんじゃないかなという感じですね」
川端「それも間違いない」
浅野「ユベントスの育成責任者も言っていましたが、まず重要なのは自分のやり方を信じることだと。もちろん、常に最先端のトレンドを勉強してブラッシュアップしていかなければならないのですが。アヤックスの育成年代の勝敗、チームの強さを完全に捨ててしまうのは、さすがオランダ腹のくくり方が違うと思いました(笑)」
川端「いや、あれは個人を鍛えるために『チームの強さ』を捨てている部分はあっても、『勝敗』自体を捨てているわけじゃないと思います。そこは似て非なる部分。アヤックスのアカデミーも、ホイッスルが鳴ったその瞬間から選手たちは全力で勝ちにいっているはずだし、そこに妥協はないと思う。そういう真剣勝負の環境じゃないと逆に育たないから。ただ、ホイッスルが鳴る前にやることを、すべて目前の勝利に注いでいるわけじゃないということかと」
浅野「なるほど」
川端「でも、日本は逆の傾向や主張が少なくないですよね。Jクラブの育成年代の指導者の多くが情熱を注いで『良いチーム』を作ろうとしているのをすごく感じます。ある意味、それでしか自分の評価を高められないと思っているからなんだけど。でも、すごく極端なことをあえて言うと、『良いサッカー』をする『良いチーム』が作れなかったとしても、『良い選手』を輩出できるならば、プロのアカデミーにおいてそのやり方は成功だと考えるべきだと思う」
浅野「現状はそうでもないの? やっぱり『良いサッカー』を見せようとするのかな」
川端「『良いサッカーをする良いチームの指導者』が評価されているなと感じることが多い。中学年代とかでこれをやると、良い資質があっても成長の遅い選手が削られちゃうんですよね。たとえば素敵なビルドアップを見せるグッドチームを作ろうとしたら、ちょっと不器用な選手は外して、早熟で器用な選手を並べた方が機能しますから。これはトレセンチームを見ていても感じることがありますけど」
浅野「結局、育成の結果が出るのは10年後なので、指導者の評価はその場の結果で出される。そのジレンマを解決するには、指導者個人の努力ではなくクラブ全体の価値観の問題だと思う。現場の指導者1人にできる話じゃない」
川端「まさにその通りで、現場の指導者が悪いという話ではまったくないです。GMとか社長とか、その辺から考え方から変わらないとダメなんだと思う。『育成年代、特により下の年代で強いチーム、良いチームを作る』ことにこだわり過ぎちゃうと、歪むよね、という。下のカテゴリーの選手を抜擢して使うとかしづらくなるし、逆に選手を取られることを嫌がるようにもなる。精神的にまとまることを重視する場合、上級生をたくさん使った方が強くなることが多いしね。勝敗にこだわるというより、『チームを作ること』にこだわることの弊害が大きい。もちろん『個人を育成した結果として強くなったチーム』はいいんだけど」
浅野「俺だって評価基準が大会での成績なら『良いチームを作る』ことを優先するし、さらに言えば監督としての力量を見せるためにも『戦術的に機能している良いチーム』にしたいと思うよね。選手のレベルは低くとも監督の力量で勝ったと思われるなら、ステップアップにも有利になるだろうし」
川端「監督が野心を持つこと自体はいいんですけど、現状、特にJクラブは『早く育成を“脱出”してトップの指導がしたいです!』という考え方の人が少なからずいるので、そういう指導者に丸投げすれば、自然とそっちになります」
浅野「そもそもJクラブの育成を個々の指導者に丸投げしていいのかという話にもなるよね」
川端「例えば『左サイドバックの浅野賀一という選手は将来的に体も大きくなりそうだし、左足のキックに教えられないものがあるから少し我慢して先発で使ってみてくれ』という要求が現場の監督にあったとして、そこで使った結果としてチームパフォーマンスが落ちてしまった時に、ちゃんと上がそれを汲んであげられるかですよね。それは『汲んでもらえるだろう』という信頼関係があるかという話でもありますが」
浅野「なるほど。でも、大成しなさそうな名前の選手ですね……」
川端「で、いざ左サイドバックの浅野くんが機能するようになった時、それはもしかすると当該カテゴリーではなく、何年か先の別カテゴリーになっていたとしても、『よくぞ育ててくれた。お前があの時に我慢して使った成果だ』と、ちゃんとその指導者の功績を認めてさかのぼって評価することだと思う。これは簡単なようで難しいけれど。これは練習についてもそう。そのためにもどんな練習をどうやっていたかというデータ自体をちゃんと残していくことも大事ですが、Jクラブのアカデミーはこれまでその点でも、各指導者に丸投げで、おろそかになっていました」
浅野「アヤックスみたいにカテゴリーを横断する役職を置くのが一つの手だろうね」
川端「そこはむしろマストですよ。育成年代では保護者との利害相反も絶対に起きてしまうので、そこも現場の指導者が個人でどうにかする部分じゃないと思う。そういう意味では、カテゴリーを横断して監督を監督する立場の人は長くクラブにいてくれないと困る」
金がないのが諸悪の根源。では、どうする?
浅野「アカデミーダイレクターがどのくらい機能するのか、あとトップとアカデミーが分離しないかどうかとか、悩ましい問題はたくさんありますね」
川端「日本はJクラブの育成の監査をやったんだけど、2年がかりくらいのプロジェクトだから、スタート時点と終わったころでアカデミーダイレクターとかGMとかの主要ポジションが違う人になっているクラブが多くて困ったという話を聞きました(笑)。こんな感じだと難しいですよね」
浅野「なんでそのポジションが頻繁に代わるんだよ(笑)」
川端「現状、アカデミーダイレクターは兼任ポジションになっていたりするし、そもそも重視されていないことが多いんだと思います」
浅野「つまり、予算がないのか(笑)」
川端「そのためにもアカデミーが『採算部門』になる必要があるわけで、前に話した選手を『売る』話と育成の話は、やっぱりリンクしてきます。育成への投資が利益になるとわかれば、アカデミーダイレクターの給料も上がるし、より良いスタッフも増やせますよね、という。ヨーロッパでこれだけ育成に各クラブが注力するのも、そこが『稼げる』からですから」
浅野「一人のスーパーな選手を輩出したら10億とか20億儲かるとなれば、そこが育成のモチベーションにもなるし、金が入れば育成に投資してスタッフの給料を上げたり、インフラも向上させられるからね」
川端「でも今は『トップ昇格◯人』みたいな、歪んだ評価基準になっちゃっていますよね。ほどほどの5人より、スーパーな1人の方がいいんだけど、前者が評価される文化になっているのも感じます。保護者目線の『落ちこぼれを出さないのが良い指導』という考え方もまだまだ支配的だしね」
浅野「人数じゃないよね。ほどほどの5人なんて集めても2000万、3000万にしかならないけど、スーパーな1人はうまくいけば10億、20億行くからね。ヨーロッパのクラブなら30億、40億も楽勝で行ける。それこそ堂安クラスのタレントならフローニンゲンは10億くらい儲かるんですよ。ガンバ大阪にはTCや連帯貢献金は入るだろうけど、タレントを高く売る仕組みがないのはもったいないよね。結局、そこが育成部門のボトルネックになっている」
川端「日本だと『育成上がりの選手は給料を低く抑えられる』みたいな、同じ経営的なメリットでも逆方向のこと言い出す人がいるくらいだから、道は遠い(笑)」
浅野「今の時代にポテンシャルある選手にそんなことしたら、もう19歳とか20歳でヨーロッパ行きますね……」
川端「水面下ではすでに問題になっていますよ。Jクラブ間の競争を抑止してきたのに、欧州とはグローバルな競争を強いられるというのもキツ過ぎます。アカデミーの選手に対して『昇格させてやるぞ』と、これまで通用してきたロジックを用いた話をしたら、『昇格しないで欧州行こうかと思っています』と返されて焦ったみたいな話は実際ありますからね」
このままだと日本の10代は「外」へ行く
浅野「初めの話に戻るけれど、中島、南野、堂安の3人の中で誰の市場価値が一番高いかと言えば、断トツで堂安なんです。理由は単純に20歳と若いから。フローニンゲンで大活躍する20歳は良いキャリアなんです。これが24歳とかだと、価値は落ちます。そこから逆算すると、欧州で頂点を狙うには19歳とか20歳くらいでヨーロッパに行くしかないのかもしれない」
川端「ただ、Jリーグを経由しないで直接ヨーロッパに行くのはお勧めできない部分が多々ある」
浅野「それはムバッペを育てたクレールフォンテーヌの育成責任者も言っていました。だからムバッペは賢いとも。なので、Jユース経由で17、18歳でトップチームデビューしてレギュラーになり、19か20歳でヨーロッパに行くというのが究極の理想像なのかな、と。堂安はこれに近いですよね。実際、今の状況が読めている10代の日本人選手はその青写真を描いていると思います。果たして、Jの強化担当者はどこまでそれを理解しているのかですよね」
川端「理解しているかどうかで言えば、理解している人も多いと思いますよ。ただ、その上で『だからそれを利用して儲けよう』ではなく『だからそれを阻止すれば俺の功績だ』みたいな発想が強いのかもしれません」
浅野「ネット化の波に逆らう大手企業みたいな構図だな(笑)」
川端「何とか独自の制度や文化的な障壁を築いて守ろうとしているところは似ているかもしれないですね。現行制度は化石になっている部分が多いと思いますよ。C契約制度とか典型ですけど」
浅野「C契約の年俸上限460万だと違約金設定も上げられないからね」
川端「さらに最初のA契約も700万上限とかですし。『慣例的に違約金を無制限に設定できるようにしていますので』とクラブ側に言われても、聡い子は『はあ?』でしょう(笑)」
浅野「最初の契約で『Cで3年ね』となり、活躍した2年目に『Aで700万ね』というのはね。単純に年俸と違約金はバランスだから、そいつで稼ぎたいなら年俸上げて違約金も上げればいいんですよ。あるいは長友でやったみたいにレンタル後に次の移籍金を折半する契約にするとか工夫してもいいし」
川端「そういう制度設計にまったくなってないんですよね。そもそも、そういう意図の制度じゃないからね。公正より平等を重んじるのが日本の気風だから、『新人はみんな一律に損をしているんだから我慢しなさい』みたいなロジックでいいと思われちゃうんだよ。そもそもこの制度を導入した時、相撲を例にとった『下積み文化』みたいな言われ方もしていたわけで、グローバルな競争がある前提がすっぽり抜け落ちている」
浅野「今後としては、ベルギーのシントトロイデンが日本の出島化してきているので、そこ経由の移籍で移籍金を取れるメソッドを作りたいですね。あとは鳥栖がアヤックスとアカデミーに関する提携を結びましたが、アヤックスの考え方がJリーグに入ることによる変化、そしてアヤックスのようなヨーロッパの提携クラブ経由の移籍にも期待したい」
川端「アヤックスとしては、まさに出島狙いなのかなとも思っています。あそこを起点にして、日本から若い選手を獲るイメージは持ってそう」
浅野「それがWin-Winの関係になればいいよね。何にせよ、今の制度は時代に適応できていない部分が大きい」
川端「ガラパゴスが強みになるなら、ガラパゴスでもいいのだけれど、なっているとは思えないんですよ。契約制度については1回リセットして考え直すべきだと思うし、Jユース間の移籍についてもルール作って解禁するべきだと思います。育成年代の年2回、抵抗あるなら年1回でもいいですが、決まった移籍期間を作り、過剰補強にならないように人数制限も付けながら、育成費を払うシステムを作る形でいいんじゃないでしょうか。これを言うと、小さいクラブが育成に投資しなくなるとか言う人いるんだけど、まったく逆だと思うんですよね」
浅野「今の状況こそ、小さなクラブが育成に投資する意味が見出せないからね」
川端「逆に大きなJクラブでレギュラーになれない、昇格するのが難しい選手が小さなJクラブに移ってトライするという流れもあっていいと思いますし。指導者やクラブの哲学や戦力が変われば、自然と評価も変わりますから、新たに日の目を見るタレントも出てくるはずです。現状、高体連への移籍しか選択肢がないのもどうなんだろうな、と。国内環境が競争的になることによって、自然と海外市場と戦える下地も作れます」
浅野「もちろん、クラブのスポンサー集めやブランディングのためにアカデミーをCSR活動のように捉えるのはOKなんだけど、実際にもそうなっているという(笑)」
川端「逆に割り切って、『ウチのアカデミーはプロを育てるとかじゃなく、あくまで地域貢献のためにある』とか、そういう方針のクラブがあってもいいのかもしれないけどね。現状、そういう主体的な選択もできないから。護送船団方式ではない、よりコンペティティブな育成システムが求められていると思うんですよ」
浅野「しかし、ピッチ上の話をしていたはずが、結局ここに話が戻ってきてしまいましたね(苦笑)」
川端「フットボリスタの名古屋特集で風間さんが『分けて考えられない』という話をされていましたが、育成もピッチ上の話と分けて考えられないんだと思います」
浅野「そろそろ、何とかまとめましょう(笑)」
川端「ええっと、今号のフットボリスタを読めば、ヨーロッパのクラブがいろんなアプローチで育成部門に大きな投資をして試行錯誤しながら進歩しているのがわかるよね、ということですね(笑)?」
浅野「日本はU-17とかU-20が昨年の世界大会に参加していたけど、U-17に出ていたジェイドン・サンチョがもうドルトムントの不動のレギュラーで、それに影響されてシティのフィル・フォデンとかも移籍をほのめかしているわけじゃないですか。とにかく金の卵の扱いをどうするかは世界中のクラブが頭を悩ませていることで、最強クラブの一角のマンチェスター・シティからでさえ、有望株が自分の価値を早く上げるために逃げようとしているのが今の時代です。で、日本はそのフォデンを擁したイングランドと良い勝負をしていたわけですし、堂安のポテンシャルはトップクラスと評価されています。もちろん、世界に羽ばたけるかはこれから次第ですが、そんな状況で『日本はどうするの?』というのが問われているのは間違いない。ぼんやりしていると、次のU-17W杯に出場するタレントを根こそぎ持っていかれるかもしれないですよ」
川端「高いお金で買われていくならいいんだけどね(笑)。先日、フランスに遠征していたU-15日本代表の選手にも、すでに欧州の有名クラブに目を付けられて追跡されている選手がいますからね」
浅野「でも今のままなら、正当な値段がつかない可能性が高いでしょうね。欧州に行った途端に5億~10億にすぐ値上がりする金の卵が二束三文で買い叩かれてしまう。逆に言えば、現状ってすごく大きなチャンスでもあると思うんですけどね。あっ、それで思い出したけれど、川端さんのAFC U-19選手権からアジアと日本について書いてもらった記事について触れるの忘れていたね(笑)」
川端「うん、なかなか触れてくれないな、と(笑)。けっこういいこと書いていたと思うんだけど」
浅野「まあ、それは本誌を見てねということで(笑)」
川端「……ありがとうございましたっ!!」
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Profile
川端 暁彦
1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。