
サッカーを笑え #39
リーグフェーズ第6節でも対戦した両者によるCL準々決勝は、前回の2-3に続き、今回の第1レグ(4月9日)もバルセロナに軍配。ホームで25分にラフィーニャ、48分と66分にレバンドフスキ、77分にヤマルと強力3トップがネットを揺らし、第2レグを残して6季ぶりの4強入りに大きく前進した。
ドルトムントは一緒に旅行していなかった
CL準々決勝バルセロナ戦で大敗(4-0)したドルトムントのサッカーを見て、ファンマ・リージョの「大急ぎで蹴ったボールは大急ぎで戻って来る」という言葉を思い出していた。
ドルトムントは大急ぎで蹴っていた。
自陣からGKやDFが大きく前へ蹴り出したボールは、うまくいけばギラシが競ることができ、幸運ならばマイボールになったが、大半はそのままバルセロナにカットされ、あっという間にドルトムント陣内に戻って来た。なので、リージョは言うのだ。ボールだけを放り込むな、繋いでみんなと一緒に上がって来い、と。みんなと上がって来る、というのを彼の言い回しだと「一緒に旅行する」となる。
ドルトムントは一緒に旅行していなかった。
大きく前へ蹴ることにはメリットがある。自陣深くでのボールロストがない、陣地を直ちに回復できる、という。しかし、デメリットもある。せっかくのマイボールを高い確率で失う、コンパクトではない長いチームになる、という。FW(1列目)が前へ走り、DF(3列目)が後ろに残ると、両者の間に広いスペースが生まれる。
ドルトムントはいわゆる「前と後ろが二分した間延びしたチーム」だった。
守備時でもCFのギラシは必ず前に残り、状況によってはもう一枚(ギッテンスかアデイェミ)も残って、ロングボールの潜在的受け手になる。マイボールになりそうな状況になると、快速3トップ(ギラシ、ギッテンス、アデイェミ)がバルセロナの高い最終ラインの裏のスペースを目がけて走り込む姿は「圧巻」であると同時に、すぐにボールが戻って来るので「あっけなく」もあった。……



Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。