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「ボールを奪うことなら誰にも負けない」流経柏高→国士舘大が生んだJ2のデュエルキング、いわきの大西悠介が来た道

2025.04.07

いわきグローイングストーリー第6回

Jリーグの新興クラブ、いわきFCの成長が目覚ましい。矜持とする“魂の息吹くフットボール”が選手やクラブを成長させ、情熱的に地域をも巻き込んでいくホットな今を、若きライター柿崎優成が体当たりで伝える。

第6回では、いわきの主軸であり、J2のデュエルキング、大西悠介に焦点を当てる。プロ1年目となった昨季の経験を踏まえ、飛躍を誓う2年目の今を伝える。

期待値が高い選手に授けられる“いわきの19番”を背負う

 今となっては替えが利かない選手に成長した大西悠介も大学4年生のときにプロから届いたオファーはいわきFCだけだった。同期の望月ヘンリー海輝(現FC町田ゼルビア)や今年東京ヴェルディから完全移籍で加入した山田裕翔は春先に内定を掴んだが、大西の場合は夏過ぎだった(加入内定のリリースは10月23日付け)。

 「いわきFCは大学の先輩が多く在籍していたし、先輩たちのように活躍したい」との思いを持って加入を決意した。

 大西は、加入前から期待値が高い選手だった。いくつか理由がある。

 谷村海那や宮本英治(現アルビレックス新潟)、有田稜(現レノファ山口FC)と同じ国士舘大学出身の選手だということ。大倉智代表取締役が個人的な思いで期待する選手に授ける19番を1年目から背負うこと。

 その期待の高さは早々に確かなものとして表出した。昨年のプレシーズンマッチ、福島ユナイテッドFC戦(△2-2)のことだ。球際やデュエルの強さを存分に見せながら、運動量を落とさずハードワークを続けられたこと。ボールに関わりながら動きをまったく止めないこと。それらのプレーで、自分がどういう選手なのか一発で示してみせた。

デュエル関連の突出した数値

 シーズン前から真摯にトレーニングに励んでおり、「積み上げてきたものは良い感覚があったし、戦術的なことも監督に求められることはある程度できた」ことでトレーニングマッチでは1本目に名を連ねることが多かった。

 チームは当初2ボランチを採用していたが、次第に攻撃偏重な「3-1-4-2」に変更する。大西は肝となるアンカーポジションを担った。ビルドアップの出口になることやウイングバックのサポートに入ることなど、タスクが多い中で、特徴ある守備面では「食いつくようにいくと外されてスペースが空くことがあった。本当に奪えるところを見定めることが大事で、奪えなければコースを限定することやボールの方向を誘導する守備をして味方も取りやすくなる」ことを意識しながら失点数減少に貢献した。

 だが、試合経験を積みながら課題を解消し、順風満帆の1年目を過ごしているときにアクシデントが発生する。5月末の第16節、ホームでの徳島ヴォルティス戦で負傷交代。右腓骨骨折で復帰まで全治2か月を要した。さらにケガから全体合流した後に再発してしまい再手術となり、人生初の長期離脱を強いられた。復帰した時はシーズンが終盤戦に差し掛かる時期で、不完全燃焼のままプロ1年目が終わった。

 19試合の出場に終わった1年目だが、守備面に特徴を持つ大西の特徴は数値にも表れていた。コーチ陣に「数値がすごいよ」と言われた。Jリーグスタッツにおける「タックル数」「デュエル勝利数」「インターセプト数」の部門で飛びぬけた数値を叩き出していた。

……

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Profile

柿崎 優成

1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。

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