
EL GRITO SAGRADO ~聖なる叫び~ #15
マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第15回(通算174回)は、W杯出場決定&セレソン粉砕のアルゼンチン代表、その過去に例を見ない絶好調ぶりと大人気ぶりについて。
こんなに愛される代表を目にするのは初めて
去る3月25日、南米地区予選第14節でボリビア対ウルグアイがドローに終わった瞬間、アルゼンチン代表は2026年W杯への切符をつかんだ。直後にホームのエスタディオ・モヌメンタルで行われたブラジル代表との試合では、予選通過の歓喜に乗ったかのように4-1と圧勝。W杯予選でブラジル相手に4得点もマークしたのは今回が初めてだったが、スコアだけでなく、試合内容でも宿敵を凌駕(りょうが)する展開を見せ、8万5000人の観衆で埋め尽くされたモヌメンタルを熱狂の渦に巻き込んだ。
その4日前に行われた第13節では聖地エスタディオ・センテナリオに乗り込み、マルセロ・ビエルサ監督率いるウルグアイと接戦を繰り広げ、ティアゴ・アルマーダ(リヨン)のゴラッソから0-1の貴重な勝利を収めていたアルゼンチン。グループの支柱リオネル・メッシ(インテル・マイアミ)がケガで欠場となるも、チーム全体が凄まじい集中力から士気を高めて強敵相手に連勝を遂げ、毎回熾烈な争いが繰り広げられる南米予選において5試合を残した時点で早々に本大会出場を決め、世界王者の風格を見せつけた。
――と、ここまでは過去にも何度か目にしてきたような光景だ。だが今のアルゼンチン代表は、前例のない状況に置かれている。ブラジル戦の後、選手たちとスタンドのサポーターが一体となって歌い、大勝利を祝う姿は、代表チームがこれまでにないほど国民から絶対的な支持を受けていることを鮮明に示していたのである。……



Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。