「やっぱり勝つのはいいな(伊東純也)」ランス16戦ぶりの白星は「日本代表にオーラをもらって(中村敬斗)」

Allez!ランスのライオン軍団 #10
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也、中村敬斗、関根大輝の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
第10回は、難敵撃破で約4カ月半ぶりとなるリーグ1勝利を手にしたマルセイユ戦の舞台裏、それぞれが存分に力を出し切ったランス3兄弟の言葉をお伝えしたい。
中村1G1A、伊東2ゴール起点…桜の神様の恩恵か!?
ついに、ついにその日が来た。
スタッド・ランスが、勝利を手にする日が……。
代表ウィーク明け初戦となった、3月29日のリーグ1第27節。相手は2位につけるマルセイユという超難敵であったが、ランスの獅子軍団は3-1で快勝。未勝利を「15」で食い止め、昨年11月10日の第11節ル・アーブル戦(○0-3)以来、本拠地オーギュスト・デュローヌでは、それよりさらに遡って10月6日の第7節モンペリエ戦(○4-2)以来と、なんと約半年ぶりの勝ち星を挙げた。
先制点で狼煙(のろし)を上げたのは、中村敬斗。
29分、GKイェバン・ディウフのキックを右サイド後方で受けたDFセドリック・キプレから、左ウイングで待ち構えるママドゥ・ディアコンへ見事なダイアゴナルのパス。
“ドリブルでペネトレーションからシュート”が十八番のディアコンが、中でフリーの中村を見つけてパスを出すという好判断を選択すると、チームのトップスコアラーは、対面にいた相手を切り返しでかわす真骨頂の形からパワフルな右足シュートをぶち込んだ。
マルセイユがゲームを動かしていた時間帯での、値千金という言葉では足りないほどの価値あるゴール。
前半を1-0で終えたランスは、さらに後半開始から6分という絶好の時間帯に追加点をマークする。
伊東純也が左サイドを攻め上がってきたボスニア・ヘルツェゴビナ代表DFアマル・デディッチからボールを奪うと、流れたボールに自慢の俊足で飛びついて右サイドを激走。中から上がってきた中村に向けて渾身のクロスを送る。
カバーに入った相手MFバランタン・ロンジエと競り合う形になった中村は、この絶好球をシュートにつなげることはできなかったが、倒れ込みながら左足でボールを蹴り出す執念のパス。これに反応したディアコンが、ぴったり寄せてきた相手をギリギリでしのいで左足シュートをネットに突き刺した。
観客数2万人超えを記録したオーギュスト・デュローヌは総立ち状態。しかしこの日のランスの勢いは、まだまだ止まらなかった。
68分、相手の不用意なパスを奪ったDFジョセフ・オクムが素早く右サイドの伊東にさばくと、伊東が時間をかけずにワンタッチで中にいたCFアフィズ・イブラヒムにパス。この速い展開が相手のカバーを遅らせ、抜け出したMFバランタン・アタンガナがGKと1対1の状況から、冷静にナイスシュートを決めた。
その後、マルセイユに1点を返されたものの、最後まで守り切って3-1で試合終了。
この日は桜の季節を祝って、桜柄があしらわれ、選手名をカタカナで記したジャパン仕様のスペシャルジャージで試合に臨んだランス。快勝後のスタジアムは、あたかも桜吹雪が舞っているような幸せなムードに包まれた。
実際、桜の神様の恩恵かと思えるような、めでたい出来事がいくつもあった。
サンバ・ディアワラ監督が就任後、リーグ戦7試合目にして初勝利。17歳でプロデビューしたランス生え抜きの19歳アタンガナは(普段は練習でもほとんどシュートが決まっていないらしいのだが)、リーグ1初ゴール。
第19節の敵地パリ・サンジェルマン戦(△1-1)以来、7試合も無得点だった中で(●1-2の第20節ナント戦は相手のオウンゴール)、“主砲”中村の先制点で勢いをつけたのを皮切りに、ディアコンも1G1Aと、攻撃陣の巧みな連係から一挙3点を奪取。
さらに守備陣の渾身のディフェンスも素晴らしかった。
シュート20本、うち枠内8本という相手の砲弾を、守護神ディウフが安定の守りで処理したほか、序盤にはオクムがゴール前への決死のジャンピングでシュートを弾き出す超ファインプレー。後半もセットプレーからのピンチを左SBセルヒオ・アキエメがゴールライン際でクリアするなど、80%ボールを支配したマルセイユの攻撃をしのぎ切った。
水曜に母国から戻った日本代表戦士にとっては、それから中2日での試合となったが、中村と伊東はフル出場。さらに中村はなんとこの日、両軍合わせて最長の走行距離(12.8km)を記録。スプリントなど強度の高いランの数においてもチーム首位と、最後まで走りに走った。
そして伊東は、2得点の起点になるという攻撃面の貢献だけでなく、チームの総タックル数16の3分の1にあたる5タックルに加え、デュエル勝利数でもボランチのアマドゥ・コネと同数でチーム最多タイの6と、ボール奪取から攻撃に転換するトランジションの場面でも大奮闘だった。
この日はベンチスタートで、73分からピッチに上がった関根大輝も、終盤にマルセイユの攻めの中心を担った俊足ウインガー、ジョナサン・ロウの再三のペネトレーションをことごとく潰し、際どい場面を守り切った。
それぞれが存分に力を出し切って手にした勝利。
ということで、ここからは試合後のランス3兄弟の言葉をお届けしたいと思う。
中村「もうエグい」「ワンチャンスで完全に流れが変わりました!」
……



Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。