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ポルトガル代表に足りないのは「明神」?目指すは「美しさ」と「勝利」の両立

2025.04.02

新・戦術リストランテ VOL.60

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第60回は、フランス代表と並ぶ世界屈指のタレント集団であるポルトガル代表に期待したい「美しさ」と「勝利」の両立について考えてみたい。ラストピースとなるのは、むしろ黒子となれる存在なのかもしれない。

美しくも勝てなかった「黄金の中盤」と「四銃士」

 夢の中盤。そう呼ばれるチームが歴史上いくつかありました。

 1982年W杯のブラジル代表はジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾの4人が「黄金の4人」と呼ばれました。左SBのジュニオールも実質的にはMFに近く、黄金は5人でしたね。システムはいちおう[4-4-2]でしたが、CBとCFが固定的な他はポジションがないくらいに流動的。パスワークに特化するとどうしてもそうなります。

 この時のブラジルはその流動性もあってポジショニングがけっこう独特でした。CBだったオスカーは後に日産自動車でプレーしていて、彼に82年のセレソンについて聞いたところ、紙に描いてくれたフォーメーションはやはり特殊でした。2トップはセルジーニョとエデルなのですが、エデルの位置は中盤の左端。「ウイングバックだね」とオスカーは言っていました。偽SBの先駆、ジュニオールはやはりボランチに近い位置。トニーニョ・セレーゾと並びます。それよりちょっと前にファルカン。トップ下はソクラテスで、ジーコはやや右側のインサイドハーフとウイングの中間。右SBのレアンドロの位置もやや高め。

オスカー

 これはあくまで各選手の基本ポジションで、ここからかなり流動性をもって変化していくのですが、何でこんなに歪なフォーメーションなのかというと、それぞれの好きな場所にいたから。「黄金の4人」は第2戦のニュージーランド戦からの急造。テレ・サンターナ監督のオーダーというより、即興的にああなっていたという話でした。オスカーとテレは86年W杯の時に喧嘩別れみたいになっているので鵜呑みにしていいかどうかわからないところもあるのですが、逆に即興であのプレーができるというのも凄い。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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