
Allez!ランスのライオン軍団 #9
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也、中村敬斗、関根大輝の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
第9回は、遠い一勝……3月の代表ウィーク前に行われたリーグ1第25節オセール戦(●0-2)、第26節ブレスト戦(△0-0)を、3兄弟の談話や競演したオナイウ阿道の“代弁”とともに振り返りたい。
24分で0-2…屈辱的なオセールのホーム状態
ランス3兄弟こと、スタッド・ランスに所属する伊東純也、中村敬斗、関根大輝の3人全員が日本代表に招集された、今回の2026年W杯アジア最終予選。
3月20日に行われたバーレーン戦(○2-0)では、伊東と中村が後半の途中から出場し、伊東は久保建英の2点目のゴールをアシスト。三笘薫に代わって投入された中村も、左サイドを縦に突破しては相手を翻弄するなど、交代選手に求められる役割を存分に果たした。
試合後のセレモニーでのみんなの晴れやかな笑顔を見て、「ランスでも早くこんな姿が見られますように」と願った方も多かったのではないだろうか。
とりわけ伊東の32歳の誕生日だった3月9日に、本拠地オーギュスト・ドゥローヌで行われたリーグ1第25節のオセール戦は、そんな明るい結果を期待してしまう一戦だった。
スタンドにはいつも以上に日本人サポーターが大勢詰めかけていて、記者の控え室ではお馴染みの番記者さんたちも、「今日はジュンヤのバースデーハットトリックがあるかも♡」なんて盛り上がっていた。
そして実際、試合開始5分に絶好のチャンスが到来した。
中村が左サイドで相手DFを巧みな切り返しで振り切り、逆サイドの伊東めがけて絶品のクロス。伊東はファーポスト手前でヘディングで合わせたが、目の前でバウンドした難しいボールを、オセールのGKドノバン・レオンが見事な横っ飛びセーブでクリアしたのだった。
天を仰いで悔しがる伊東。それでもキックオフ直後の得点機に、「今日の風向きはランスにあり!」かと思われた。
ところが……。
その風は、ホーム側ではなくオセール側に吹いていた。15分に左CKから、そして24分にカウンターからと、続けざまに得点。
ランスがたちまち2点ビハインドに追いやられると、ゴール裏のウルトラスはさっさと応援旗を片づけて、次々にスタンドを後にした。残ったサポーターも、満員のアウェイ席サポーターと一緒になって敵軍に声援を送り、スタジアムはさながらオセールのホーム状態となった。
そんな屈辱的な雰囲気の中、75分に最大の決定機が訪れる。
後半から出場のママドゥ・ディアコンが左から入れたクロスを伊東が左足でシュート。相手DFが弾き返したボールを、伊東が再びダイレクトで叩き込んだが、これはGKがセーブ。その跳ね返りに飛びついた中村のシュートはミートせず、こぼれ球を19歳の新人FWハフィズ・イブラヒムが押し込んだが、これもポストに弾かれた。
この怒涛の波状攻撃が不発に終わると、ランスは0-2のまま、リーグ戦6連敗となる黒星を刻んでしまったのだった……。

「1点取れてれば…」「出しどころがない…」
試合後、誰よりも残念がっていたのは、惜しいチャンスを逃した伊東だった。
「後半はわりと良かった。良い攻撃ができていて、うまくいっていた感じだったんですけど。1点取れてれば(流れが)変わってたんで、それは俺のミスだったかな……と」
今、あらためてこの試合後のコメントのログを見返すと、……



Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。