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マドリッドダービー「三幕劇」はこうして――“戦術外”で決着したCL16強対決をめげずに分析する

2025.03.14

サッカーを笑え #37

3月4日の第1レグは2-1でレアル・マドリー、12日の第2レグは1-0でアトレティコ・マドリー。CLラウンド16で実現したマドリッドダービーは、2戦合計2-2で延長戦30分間でも決着つかずPK戦の末、昨季王者に軍配が上がった。両者互角の死闘が繰り広げられた“210分間”の戦術的ポイント、カルロ・アンチェロッティとディエゴ・シメオネの采配合戦を振り返りたい。

 レアル・マドリーの勝ち上がりは、戦術的な分析外のところで決まった。終盤勝負に持ち込む、というところまではシメオネの計算通りで、90分に近い時間帯あるいは延長戦の30分間で決着をつける、というシナリオに向かっていたが、PK戦という誰もコントロールできないゾーンに入った結果、実績のある方、伝統的に強い方が勝った。CLでPK決着と言えば忘れられない15-16シーズンの決勝、あの時もレアル・マドリーがPK戦を制している。

 今季はアトレティコ・マドリーがレアル・マドリーと互角にやり合えている。リーガではホームもアウェイも1-1。CLでは第1レグがサンティアゴ・ベルナベウでの2-1で、第2レグがメトロポリターノでの1-0で通算引き分け。勝ち上がりの可能性は五分五分と見ていた通りの試合となったが、アトレティコ・マドリーからすればまたもやられたわけで、心情的な部分でのダメージは大きくフィジカル的にも疲労困憊しているはずだから、今週末(3月16日)バルセロナ戦に敗れてリーグ優勝の可能性も喪失するかもしれない。ベンフィカと当たって大勝し(2戦合計4-1)主力を早めに休ませたバルセロナと比べると、これもくじ運の悪さ――これもまたコントロール不能――を感じるが、これもサッカー。軸足が滑ってフリアン・アルバレスのPK成功が取り消しになったのもサッカー。シメオネの狙い通りの展開で、采配合戦ではアンチェロッティを上回ったと思うが、延長戦に入ってからベリンガム、バルベルデの常識外のスタミナで盛り返してみせたのもサッカー。「死闘」という形容がぴったりの120分余りで、戦術を語ってサッカーをわかった気になっている自分への戒めのような試合だったが、めげずに分析していく。

「三幕劇」の推移とそれぞれの理想

 両チームの第1レグと第2レグのスタメンは以下の通り。カッコ内が第1レグ。

アトレティコ・マドリー
[4-4-2]

    アルバレス   グリーズマン

ギャラガー          ジュリアーノ
(リノ)

     バリオス   デ・パウル

レイニルド ラングレ ヒメネス ジョレンテ
(ガラン)

         オブラク

 第2レグ、シメオネは左サイドを入れ替えて守備を強化してきた。これは第1レグでロドリゴに散々突破されて早々に失点したことの反省だろう。1点のビハインドで折り返したこの試合で先制されて2点差になれば実質的に勝ち上がりは不可能。よって、点を取りに行かなければいけない試合なのにまずは失点を防ぐことから入る、というシメオネらしい守備的発想だが今季のアトレティコ・マドリーはそれで結果を出してきた。控え層が頭数から言っても攻守両面の駒がいるという意味でも厚く、終盤の得点で勝ち点を稼いできた。

レアル・マドリー
[4-2-3-1]

          ムバッペ

ビニシウス    ベリンガム    ロドリゴ
         (ブラヒム)

     チュアメニ  モドリッチ
    (カマビンガ)(チュアメニ)

メンディ リュディガー アセンシオ バルベルデ

          クルトワ

 一方、アンチェロッティは第1レグで出場停止だったベリンガムを入れた他、中盤をいじってきた。攻撃的にシフトできる唯一のMFモドリッチは、終盤まで残しておくかと思っていたが、先発させた。この顔ぶれが今のレアル・マドリーの最も攻撃的な布陣で、2点目を取りに来たわけだが、こちらも想定内である。そもそもレアル・マドリーが攻めてアトレティコ・マドリーが受ける、という試合の入り方が、いつものシナリオだからだ。

 この対戦は「三幕劇」である。

 第一幕:開始から30分間……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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