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久保建英の現在地と、マンチェスターU戦の勝算。ソシエダでは“やり尽くした”23歳の、プレミア挑戦の試金石

2025.02.28

サッカーを笑え #36

ソシエダで3シーズン目、リーガに加えてコパ・デルレイ、ヨーロッパリーグで勝ち残る今季も、代えの利かない存在として攻撃を牽引している予測不能のドリブラー。そのキャリアを左右するかもしれない注目の対決、3月6日(H)&13日(A)に行われるELラウンド16、マンチェスター・ユナイテッド戦を展望する。

スペインには次の居場所はない

 個人的には久保建英は来季プレミアリーグへ移籍すると思っている。

 ソシエダではもうやることがない。

 チームの攻撃を一身に背負うという状態がここ2季続いている。リーグ戦5ゴールはチーム得点王だが、その数字以上に貢献度は大きい。フィニッシュして打開してCKを蹴って……。アシスト(0)が少ないのが玉にきずだが、その1つ前の「崩す」プレーを任されているからで、マイナス評価にはならない。

 加えて、今季はボール出しにも積極的に関与している。自陣深くでボールを奪い返した後、味方がまず探すのが久保。渡しておけば、抜群のテクニックでボールを失わず、仲間が攻め上がる時間を作ってくれる。その間に追い越して走り込んだ仲間の足下に久保からボールが届く――こういう感じでカウンターの起点になっているし、GKからのボール出しでも下がってボールをもらい、そのままボールを運びつつ左サイドに流れて、仲間に追い越されるのを待っている。この時、右から左へ流れた久保に合わせて、バランスを取るのは周りの仕事。

 ゴール+ドリブル打開+CK+ボール出しは「久保次第」になっているし、主戦場は右サイドながらもどこへ動くのも「久保次第」になっている。

2月23日のリーガ前節レガネス戦(3-0)のプレー集。48分には圧巻の個人技からネットを揺らし、今季6度目のマン・オブ・ザ・マッチに輝いた

 ソシエダはクラブの規模と地元の少年を育成する、という方針的に、CL出場を目標とすることはできない。目標は欧州カップ戦出場でCLはボーナス。現在リーガ9位とあって来季の出場も不可能だろう。南野拓実(モナコ)、古橋亨梧、前田大然、旗手怜央(いずれもセルティック、古橋は1月末にレンヌへ移籍)、上田綺世(フェイエノールト)らの活躍を見て、うらやましく思ったのではないか。

 とはいえ、スペインではステップアップは難しい。古巣のバルセロナ、レアル・マドリーへの移籍はレベル的にも感情的にも不可能。アトレティコ・マドリーがレベル的には最適だが、財政的に高額の移籍金と年俸を出すのは難しいし、守備に走らされるシメオネのサッカーへの適応には時間がかかるか、合わないかのどっちか。続くレベルのビジャレアルやベティスではステップアップにならない。本来3強を脅かす存在であるべきセビージャとバレンシアは没落が激しい、ということで国内には居場所がない。プレミア行きしかないのだ。

 ちなみに、久保と同じような立場にスビメンディもいて、彼も来季はプレミアへ移籍するだろうと見ているし、その方が本人のキャリアのために良い。よって、来週(3月6日)のEL決勝トーナメント1回戦、マンチェスター・ユナイテッド戦は、両者のプレミア挑戦の試金石になると注目している。

マンチェスターU戦の先発メンバー予想

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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