育成と結果。“二兎”を追い求めるサガン鳥栖のリスタートは小菊昭雄新監督に託された
プロビンチャの息吹~サガンリポート~ 第11回
午前中には雪も舞った1月10日。14年ぶりにJ2を戦うサガン鳥栖の今シーズンは、駅前不動産スタジアムで幕を開けた。新たに招聘されたのは、セレッソ大阪で27年もの時間を過ごしてきた小菊昭雄監督。若手の育成にも定評のある情熱の指揮官に、1年でのJ1復帰は託された。そんな始動日を取材した杉山文宣が、新監督への期待を綴る。
小菊体制のスタートは駅スタで始まった
2025年1月10日、駅前不動産スタジアムにてサガン鳥栖が新シーズンを始動させた。2011年のクラブ史上初のJ1昇格、そして、2012年から戦い続けたJ1の舞台。13年の間、守り続けてきた日本最高峰の舞台から昨季、鳥栖は陥落することになってしまった。14年ぶりに戦うことになったJ2でのシーズン、オフには新たに15人の選手が加入。期限付き移籍から復帰した3人を加えると18人の選手が入れ替わる大幅な刷新となった。また、昨季途中から指揮を執っていた木谷公亮も退任。1年でのJ1復帰という絶対の使命を託されたのは昨季までセレッソ大阪で指揮を執っていた小菊昭雄だった。
始動日は強い寒気による降雪に見舞われ、当初は午前の予定だった練習が午後への変更を強いられるというスタートになったが、約1時間半のメニューを行った。主なコーチングはC大阪でも監督、コーチの関係で共闘し、腹心とも言える高橋大輔コーチが行い、小菊監督は少し離れた位置から全体を見るという形で進められた。練習メニューのセッションの合間には選手たちに声を掛けるなどしてコミュニケーションを取るなど、新指揮官の新天地での初日は大きな動きは見られず、穏やかなものだった。
そんな初日の感想を問われた小菊監督はこう答えている。
「一言で言えば、ギラギラ感がすごかったなというふうに思っています。経験ある選手、若い選手、全員が今日から目標に向けて一丸となって勝ち取るんだという強い気持ちを感じましたし、非常にアグレッシブにやってくれたと思います。また、同時に、非常にクオリティーの高い選手がそろっているなと思いました。ここから全員で良い競争をしながら一人ひとりが成長できるように私自身も最大限、サポートしていきたい」
指揮官の目には上々の滑り出しに映っていたということだろうか。選手たちが見せた姿勢に対して、新指揮官は充実の表情を浮かべていた。
桜一筋27年の男に届いた“監督としてのオファー”
ただ、その“ギラギラ感”は小菊監督も同じ思いだろう。1998年、愛知学院大学を卒業する直前にC大阪のU-15のコーチとして採用されると半年間の試用期間を経て、正式に採用。その後はコーチ、スカウト、強化部などクラブ内でさまざまなポジションを経験すると2021年8月、ついに監督に就任することになった。そこから3シーズン半、監督の責務を務めあげると2024年シーズン限りで契約満了となった。実に桜一筋27年、長きにわたってC大阪を支えてきた男は“育ての親”と袂を分かつことになった。
「私はC大阪で27年間、育てていただいて本当に感謝の気持ちでいっぱいです。C大阪ではいろいろな仕事をさせていただいたなかで最後は監督までさせていただきました。監督を3年半させていただいて本当に監督業の楽しさ、また厳しさ、孤独、いろいろなものを感じましたが、私自身も監督として成長したい。また人間としても成長したい。そういう思いのなかでやはり、私は来年50歳という区切りの年になるんですが、一度、その環境から出て、まっさらな状態で人間関係も構築しながら選手たちと新たなチームを作り上げたい。そういう思いが強かったので、監督業をサガン鳥栖で(続ける)という選択をしました」……
Profile
杉山 文宣
福岡県生まれ。大学卒業後、フリーランスとしての活動を開始。2008年からサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフ千葉、ジュビロ磐田、栃木SC、横浜FC、アビスパ福岡の担当を歴任し、現在はサガン鳥栖とV・ファーレン長崎を担当。Jリーグを中心に取材活動を行っている。