サウダージの国からボア・ノイチ 〜芸術フットボールと現実の狭間で〜 #12
創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第12回(通算190回)は、2025シーズンの新戦力としてJ1、J2クラブが獲得した主な初来日のブラジル人プレーヤーに注目し、それぞれの経歴や特徴を紹介したい(※記事内の情報は2025年1月10日時点)。
カエターノ、パトリック・ウィリアム、ジョアン・ペドロ、マテウス・ブエノ
来月14日に開幕する33年目のJリーグに、今年も新たに数人のブラジル人選手が加わった。
世界中のフットボールファンに名を知られているほどのスーパースターはいない。しかし、各クラブが慎重に吟味して獲得し、成績向上の起爆剤となり得る選手が目白押しだ。
その筆頭が、ヴィッセル神戸にやってきた25歳のDFカエターノだろう。
左利きで、CBと左SBをこなせる。CBとしては大柄ではないが、スピードがあり、相手の攻撃の意図を察知してシュートやクロスをブロックする能力が非常に高い。ジャンプ力があり、空中戦でも引けを取らない。足下の技術も確かで、攻撃の起点となれる。
中堅クラブで経験を重ね、これまでブラジル1部リーグで47試合(1得点)、2部リーグで76試合(2得点)プレー。ただし、2023年から在籍した名門コリンチャンスではポジションを取り切れず、全大会を合わせて2023年は23試合、昨年は15試合の出場にとどまった。……
Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。