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吉岡宗重SD体制の新生トリニータ、昨季の分析から導き出された「解決策」を読み解く

2025.01.09

トリニータ流離譚 第20回

片野坂知宏監督の下でJ3からJ2、そしてJ1へと昇格し、そこで課題を突きつけられ、下平隆宏監督とともにJ2で奮闘、そして再び片野坂監督が帰還する――漂泊しながら試練を克服して成長していく大分トリニータのリアルな姿を、ひぐらしひなつが綴る。第20回は、吉岡宗重SD体制となって新たに始動した新チームが昨季の課題にどのような解決策を見出していくのか、当事者たちの声から読み解いていきたい。

 昨年、クラブ創立30周年の節目を終えた大分トリニータ。大分県日田市出身の漫画家・諫山創氏の代表作でありアニメ化もされて人気を博す『進撃の巨人』とのコラボレーションやチームバストミカなどの記念グッズ発売に続き、マイルストーンとなるべきシーズンのラストには55人のOBの華やかな競演によるメモリアルマッチも開催された。激動だった30年の足跡を振り返り終え、今季からは次の10年、そして20年、30年と未来を見据えた日々がスタートする。

吉岡SDの分析は「ボールを奪った後が課題」

 この節目を境に、トリニータは大きな変化を迎えた。2016年に強化部長となって以降、強化セクションの責任者を務め、クラブのフィロソフィを確立してその体現に尽力してきた西山哲平GMが昨季限りで退任(今季からはAC長野パルセイロのスポーツダイレクター兼トップチーム強化部長に就任)。後任には2006年から大分FCの強化部で働き、2011年に鹿島アントラーズへと移籍していた吉岡宗重氏が、スポーツダイレクターとして復帰することとなった。

 吉岡SDの就任が決定したのは昨年11月。10月にアントラーズの取締役フットボールダイレクターを退任しており、西山・前GMがクラブを去ることが決まった後の、急な決断となった。チームがなんとかJ2残留を決めたシーズン最終盤のことだ。

 「10月までアントラーズで仕事をしていたので、どちらかというとJ1のチームをよく見ていました。トリニータのことはずっと気にかけてはいましたが、やはり昨季、シーズンを通してトリニータの試合を見ることができておらず、就任が決まってからいろいろと自分なりに分析することになったので、今季の編成は自分がこれまでの強化の仕事をしてきた中で最も大変だったと思います」

 そう振り返る吉岡SDが昨季の分析から導き出した課題とその克服に向けての今季のポイントは、以下の通りだ。

 「昨季の試合を見返すと、ボールを奪った後に大事にし過ぎているというのが、昨季のチームの特徴の1つだったと思っています。スタッツの上でも、ボールを奪った後にアタッキングサードやペナルティエリアに入る割合はJ2の中でもワーストでした。ボールを奪う位置の高さはJ2で6番目、奪う早さの目安となる5秒以内のリゲインは5番目で、これは十分にJ1昇格プレーオフ圏内を狙えるスタッツだと考えられます。……

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Profile

ひぐらしひなつ

大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg

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