マンツーマンこそ正義!戦術トレンドを象徴する、アタランタ躍進が示す意味
新・戦術リストランテ VOL.48
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第48回は、昨シーズンのEL制覇に続き、怒涛の11連勝でセリエA首位を争っているアタランタ。ガスペリーニ就任9シーズン目にして第二期黄金期を迎える彼らの躍進は、昨今の戦術トレンドを象徴しているとも言える。独特のマンツーマン戦術について、あらためて考えてみたい。
ガスペリーニ9シーズン目にして第二期黄金期
アタランタがセリエAで首位争いをしています。現時点で首位ナポリと3ポイント差ですがアタランタは1試合少ない。もし優勝したらクラブ創設以来の初スクデットです。
欧州タイトルは昨季のELを獲っています。無敗だったレバークーゼンに3-0は衝撃的でした。ルックマンがハットトリックの大爆発。
ガスペリーニ監督が率いて9シーズン目。当初から3バックを軸にモダナイズされたチームで、基本的に戦い方は変わっていないと思います。
自陣から可変もまじえたビルドアップ、敵陣でのハイプレスを基調とするプレースタイルは現代の強豪チームに共通するものになりましたが、アタランタの一風変わった特徴は守備のマンマークでしょう。これはビエルサ監督との共通点でもあります。モダナイズされているが異色でもある。
ガスペリーニにとってアタランタはちょうどいいクラブだったのではないでしょうか。例えばレアル・マドリーを率いてアタランタのようなサッカーはできないと思います。ビエルサもそうですが、3番手くらいから中堅までが合っている気がしますね。
マンツーマン守備の利点として、相手がそれに慣れていないというのはけっこう大きいのではないかと。特にボールをしっかり支配したい相手に効き目がある。逆にどかどか蹴ってこられると同数守備なのでどうかというところはありますけど。とりあえず格上に対して互角の試合に持ち込める強さのあるタイプなので、強豪に挑む立場がちょうどいい。
パプ・ゴメス、イリッチッチを擁してCLベスト8に進出したチームからメンバーも入れ替わり、ルックマンやエデルソンを中心に昨季はELを制した。今季はセリエA初優勝を狙えるチャンスがあり、CLリーグフェーズは13位とプレーオフ圏内。もう一息でノックアウトフェーズにストレートインできる位置にいます。第二期黄金時代と言えるでしょう。
チャレンジ&チャレンジ
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。