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苦境を乗り越え続けた努力家・西山拓実。相模原の2025契約更新第1号が強めるJ2昇格への決意

2024.12.30

相模原の流儀#11

2023シーズンにクラブ創設者の望月重良氏から株式会社ディー・エヌ・エーが運営を引き継ぎ、元日本代表MFで人気解説者の戸田和幸を指揮官に迎えたSC相模原。新たに築き上げた“エナジーフットボール”の礎を2024年6月より引き継ぐシュタルフ悠紀監督の下でJ2復帰を目指す中、“緑の軍団”が貫く流儀に2021年から番記者を務める舞野隼大氏が迫っていく。

第11回では、2025シーズン契約更新第1号となった西山拓実の決意について。努力家が乗り越えてきた苦境の数々を振り返りながら、強まるのJ2昇格への想いに迫る。

 12月6日、SC相模原で2025シーズンの契約合意が初めて発表された選手は、2年前に東海大学から加入し進化を止めない西山拓実だった。

 大卒1年目の2023シーズン開幕当初、試合になかなか絡めずにいた左利きのボランチは、5月以降から一気に主力へと定着。戸田和幸前監督からも「(2023年で)最も成長した選手」と評価をされた。

 人一倍努力家な姿勢を認められた西山は今季、副キャプテンに任命された。開幕戦からは連戦によるターンオーバーと累積警告による出場停止を除くすべての試合で先発起用され、チームの主軸になっていた。

 「頭も使えて口も使えなきゃいけないし、バランスを取れなければいけない。伝えたことを実践できる理解力も必要」という前指揮官が求めるアンカーに必要な素質を身につけ、着実に体現していった。

監督交代に戦線離脱で一転。決死の覚悟を示したイエローカード

 6月、順風満帆の日々を過ごす西山に試練が訪れる。自身のことを信頼していた戸田監督が解任され上に直後のJ3第18節・松本山雅FC戦の前半で西山は負傷交代をしてしまった──。

 リハビリをしている間、シュタルフ悠紀リヒャルト氏が相模原の監督に就任し、西山は新体制での始動に出遅れてしまう。中断期間明けの第24節・松本戦で途中から出番を得たが、以降はメンバーから外れる日々が続いた。

 「言い訳をする材料はいろいろあったと思う」。本人がそう話すように、監督交代やケガなど、出場機会を失って“仕方がない”と言える要素はいくつもあった。しかし西山は現実から目を背けそうになりながらも、矢印は常に内側へ向け続けて、自分の良さを忘れずに日々精進する。その姿勢は周囲も目を見張るほどで、チームそのものにもいい刺激を与えた。特に若手たちが昨シーズンから切磋琢磨を続けられたのは、西山のストイックな姿勢が小さくない影響をもたらしたと言える。……

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Profile

舞野 隼大

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。

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