「責任を感じます」「監督を勝たせたい」…伊東純也と中村敬斗が振り返る新生ランスの2024年
Allez!ランスのライオン軍団 #5
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也と中村敬斗の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
第5回は、5勝5分5敗・20得点18失点の10位(全18チーム)で終えた今季リーグ1前半戦を、ルカ・エルスナー新監督からも絶大な信頼を得てチームを牽引してきた2人に振り返ってもらった。
南野と競演の“ジャパン・ダービー”は「悔しい」0-0
12月14日に行われたモナコ戦をもって、スタッド・ランスのリーグ1前半戦が終了した。
厳密には全34節の半分を消化したわけでなく、終わったのは第15節まで。ここでリーグ戦はウィンターブレイクに入り、新年最初の週末に第16節から再開する(このモナコ戦の後、22日にはフランスカップのラウンド64を戦い、6部のクラブに1-3で勝利した)。
スタッド・ランス対モナコは、リーグ1でプレーする日本代表の3人が対決するということで、現地メディアでも“ジャパン・ダービー”としてかなり大々的に取り上げられた。ウォームアップの前、彼らがピッチ上で楽しげに談笑する様子も放送局のカメラがしっかりキャッチしていたので、目にした方も多かったと思う。
そして試合もスコアレスドローと、両者が仲良く勝ち点1ずつを分け合う結果に終わったのだった。
とはいっても、内容は0-0という味気ないスコアから想像するものとはほど遠く、両チームが何度もゴールに迫り、3-3くらいの激戦になっていてもおかしくないようなエキサイティングな展開で、その中で最もゴールに近づいたのが、SAMURAI BLUEの面々だった。
まずは28分、南野拓実が右寄りの位置からゴールエリアに侵入し、フリーの状態で右足を振り抜く。しかしこれは、ランスの主将エマニュエル・アグバドゥが見事なスライディングで間一髪のクリア。
続いて37分、ランスに最大のチャンス。マーシャル・ムネツィの右からの高めのクロスに中村敬斗が飛びついたが、左すねに当たったボールはわずかに左枠の外側へそれた。相手GKフィリップ・ケーンは、ムネツィがシュートを打ってくることを警戒していたから、中村の前はガラ空きだった。絶好機を逃し、仰向けに倒れた中村の表情も一瞬うつろになった。
その直後には伊東純也もゴールを狙い、前半の両軍合計11本のシュートのうち、南野が3本、中村が2本、伊東が1本と、半分以上を日本勢が生み出す展開となった。
後半も、51分には伊東が中へ入れたパスからウマル・ディアキテがシュート。これがクロスバーに当たって跳ね返り、セカンドチャンスで中村が右足を振り抜くも、ボールは惜しくもバーの上。
対する南野も、相手DF に押され気味に放った一打や終盤アディショナルタイムのボレーシュートなど、最後の最後までゴールに迫ったが、この日はことごとく阻まれた。
同日の4時間前に2位のマルセイユがリールと引き分けていただけに、彼らと同ポイントで並ぶモナコにとっては勝ち点3が欲しかった。一方のランスは、CLにも出場する難敵から勝ち点1を死守した比較的ポジティブな結果とも言えたが、試合後の選手たち、とりわけ中村は「今日引き分けたのは自分が外したせいだと思います。悔しいです」と責任を痛感していた。
「浮き球で来るのを想像していなかった。彼(ムネツィ)もグラウンダーで出したつもりだったらしいんですけど、でもドンピシャに来たには来たんで、決めなきゃいけなかったです……」
37分のシーンで中村の頭にあったのは、グラウンダーで来たボールを左足で押し込む、というイメージ。ムネツィもそのつもりだったが、実際は微妙な高さのボールがやってきて、「足でいこうか頭でいこうか」と一瞬迷いがあった中で出たのが左足だった。
ボールが当たったのはすねあたり。コントロールは難しかった。しかしダイビングヘッドで飛び込んでいたら、着地の際に骨折している右手にダメージがあったかもしれないから、頭でいかなかったのは正しい選択だっただろう。
「入る時は入るけど、入らない時は入らないですね。あれが5試合連続ゴール(第4〜8節)の最中だったら、たぶん入っていたと思う……」
「今はドリブルをするのも難しい」中村の現状
……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。