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先祖返りの[4-4-2]と新しいシメオネ。12連勝で首位浮上のアトレティコ・マドリーは何が違うのか

2024.12.27

サッカーを笑え #32

ラ・リーガは第18節を終えて約2週間のウィンターブレイクに突入(2025年1月3日からリーグ戦の延期分とコパ・デルレイが再開)。今季のセンセーション、ハンジ・フリック率いるバルセロナが11月に入って急失速した一方、12月21日には敵地で彼らを1-2で下し、7連勝(公式戦12連勝!)で首位に躍り出たのが、ディエゴ・シメオネ体制14季目のアトレティコ・マドリーだ。

 バルセロナの転落が止まらない。

 『対策されたバルセロナ。リーガではどんな弱小も繰り出す「ボール出し阻止」「ハイライン攻略」法とは?』という記事を書いた後に、レガネスとアトレティコ・マドリーにも敗れて、首位から陥落し2024年を終えることになった。

 とはいえ、アトレティコ・マドリー戦は内容からすれば勝って当たり前の試合だった。

 数字は圧倒的だ。

 ボール支配率67%、シュート本数19対5、CK本数11対3。直近7試合で1勝2分4敗となって、マドリッド系のメディア『マルカ』は、「レアル・マドリーだったらフリックは解任危機」なんて敵の傷に塩を塗り込んでいたが、そんなわけがない。内容を見なさい内容を! フリックが任を解かれるとすればホームでラス・パルマスとレガネスに連敗したことによるべきで、アトレティコ・マドリーに敗れたことではない。

 シメオネも試合後に振り返っているではないか。「我われは決定力の女神に恵まれた」、「バルセロナが敗れた試合はすべて負けるに相応しくないものだった」と。

 むしろこのアトレティコ・マドリー戦はバルセロナの強さを再認識させるものだった。

 ラミン・ヤマルがいないと攻撃力が低下する。それは間違いない。11人のベストメンバー+2、3人でフル回転してきて疲れが出ている。それも間違いない。対策されたことも間違いない。だけど強敵をあれだけ圧倒できる強さもまた、間違いない。もちろん、勝つはずの試合で負けて首位陥落したショックは大きい。このクリスマス休暇がプラスと出るか、マイナスと出るか。いかに自信喪失をさせないかがフリックの腕の見せどころだろう。

首位決戦を制したアトレティコ・マドリーは12勝5分1敗・33得点12失点で勝ち点41に。一方、バルセロナは1試合消化が多いにもかかわらず12勝2分5敗・51得点22失点で同38と、同40のレアル・マドリーにも抜かれて3位に後退した

選手層は2強よりも上

 さて、今回はシメオネ体制で初めてビジターとしてバルセロナに勝利し、公式戦12連勝のまま年を終えたアトレティコ・マドリーについて書きたい。

 まず12連勝の中身だが、うち10試合は相手に恵まれた面もある。

 コパ・デルレイの2勝はカテゴリーが下のチーム、CLの2勝はスパルタ・プラハとスロバン・ブラチスラバが相手、リーガの6勝はラス・パルマス、マジョルカ、アラベス、バジャドリー、セビージャ、ヘタフェの中下位勢から挙げたもの。価値があるのはパリ・サンジェルマン相手とバルセロナ相手の勝利だが、これはいずれも後半アディショナルタイムのカウンターで挙げた、内容が伴ってないもの、というのが共通点。12勝のうち半分の6試合が1点差勝利ということもあって、絶対的な強さは感じさせないのだが、それがシメオネらしさ、というものかもしれない。

今季のチームは公式戦26試合中12試合で計13得点を後半アディショナルタイムにマークしている

 以前『名(迷)采配続くシメオネの「4つの原則」とは?アトレティコ14季目の“介入”に関する考察』の中で、「エルモソ(現ローマ)が抜けた5バックは“最終ラインの人数が多く守備が厚い”という以上の意味を持たず、攻撃面でのメリットは見えなかった。それなら4バックでいいじゃないか」と書いたが、果たして今のチームは第一期の黄金時代を築いた[4-4-2]へ先祖返りしている。……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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