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フランス勢のCL戦評。南野拓実とモナコが敗戦から学ぶこと、ブレストとリールにあってパリSGにないもの

2024.12.22

おいしいフランスフット #11

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第11回(通算169回)は、伏兵の健闘と王者の不振、今季CLに参戦するリーグ1勢それぞれの戦いぶりを振り返ろう。

 2024年内のUEFAチャンピオンズリーグ全日程が終了し、リーグフェーズ出場36クラブが6試合(全8節)を消化した。ここで、フランスから参戦している4クラブの戦況をチェックしたい(カッコ内は今季リーグ1第15節終了時点の順位)。

7位:ブレスト(11位)
4勝1分1敗 勝ち点13

シュトゥルム・グラーツ:○2-1
ザルツブルク:○0-4
レバークーゼン:△1-1
スパルタ・プラハ:○1-2
バルセロナ:●3-0
PSV:○1-0
シャフタール:1月22日(A)
レアル・マドリー:1月29日(H)

8位:リール(4位)
4勝1分1敗 勝ち点13 

スポルティング:●2-0
レアル・マドリー:○1-0
アトレティコ・マドリー:○1-3
ユベントス:△1-1
ボローニャ:○1-2
シュトゥルム・グラーツ:○3-2
リバプール:1月21日(A)
フェイエノールト:1月29日(H)

16位:モナコ(3位)
3勝1分2敗 勝ち点10 

バルセロナ:○2-1
ディナモ・ザグレブ:△2-2
ツルベナ・ズベズダ:○5-1
ボローニャ:○0-1
ベンフィカ:●2-3
アーセナル:●3-0
アストンビラ:1月21日(H)
インテル:1月29日(A)

25位:パリ・サンジェルマン(1位)
2勝1分3敗 勝ち点7 

ジローナ:○1-0
アーセナル:●2-0
PSV:△1-1
アトレティコ・マドリー:●1-2
バイエルン:●1-0
ザルツブルク:○0-3
マンチェスター・シティ:1月22日(H)
シュツットガルト:1月29日(A)

“勝ち切れる”ブレスト、マドリッド勢を連破したリール

 昨季のリーグ1の順位(1位:PSG、2位:モナコ、3位:ブレスト、4位:リール)がほぼ逆転した形になっていて、ブレストとリールはあと1ポイント取ればノックアウトフェーズ・プレーオフ進出(9位〜24位)以上が確定。

 フランス王者のPSGに至っては、現時点でプレーオフ圏内からも漏れている。勝ち星を奪えなかったPSVやアトレティコ・マドリーから、それぞれブレスト、リールがしっかり勝ち点3をゲットしているというのも、国内リーグで今季も首位に陣取る彼らにとっては屈辱に違いない。

 CL初出場のブレストについては、折り返し地点後の4試合にバルセロナやレアル・マドリーといった強豪との対決が控えるカレンダーを踏まえ、前半の4試合でできる限りの勝ち点を取ることを使命としていたが、それを見事に遂行した上に、12月の第6節ではオランダリーグ首位(第16節終了時点)のPSVからも白星を手にした。

 彼らの強さは、なんといっても最後まで切れない集中力にある。レベルの高い戦いになればなるほど、“ふと集中力を欠いた1本のパスミス”といった一瞬の出来事が命取りになるものだが、試合終了まで気を抜かず、それぞれが自分の仕事をまっとうするのだという姿勢がブレストの選手たちには徹底されている。

 リーグ1第9節でスタッド・ランスが対戦した時も、CLから中2日という日程で挑んだブレストは、当然ながらフィジカル面でのハンデを負っているはずだった。ところが、そんなことを微塵も感じさせない渾身のプレーで、1-2で勝利をさらっている。

 序盤に2点を先制した彼らは、伊東純也のCKから1点を返されるも、敵地で最後までリードを守り切った。チャンスの数では上回っていたランスにとっては「勝てた試合」と感じてもおかしくない内容だっただけに、敗戦後は伊東も中村敬斗も無念がっていたが、こういう試合に勝ち切れる力こそが、ブレストの強さだ。

 そんなガッツのある選手たちを、包容力に富んだエリック・ロワ監督が巧みに取りまとめている。セネガル代表のウインガー、アブダラ・シマが今大会チーム最多の3得点をマークしているが、特定の点取り屋がいるわけではなく、どこからでも誰でも点を取りにくるのが特徴だ。

 各ポジションに質の高い選手をそろえているリールは、スポルティング戦の黒星で幕を開けたが、続くホームでのレアル・マドリー戦では、シーズン序盤で相手がまだチームとして十分に機能していない隙を突き、ハンドボールで得たPKからの1点を守って勝ち点3を獲得した。レアル移籍後、初のフランス凱旋が注目されたキリアン・ムバッペは57分から出場するも、存在感は薄かった。

 さらに次のアトレティコ・マドリー戦で、敵地で勝利をもぎ取ったのは大金星。この試合、リールは3日後に控えるリーグ戦でのダービー(対RCランス)に備えて、チーム得点王のジョナサン・デイビッドら主力を温存していた。そのせいもあって前半は押されて先制を許したのだが、後半、アトレティコの勢いが緩んだのと、リールが終盤にかけて徐々にレギュラー陣を送り込んだのがうまい具合に作用し、3ゴールを決めて逆転勝ちを果たした。

 次戦の相手はここまで6戦全勝の首位リバプールだが、最終節、ホームでのフェイエノールト戦で勝ち点1を取れる可能性は十分にある。

31分→2連敗…南野が語るモナコの現実

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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