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42億円→78億円!広島の驚異的な収益アップを支えた新スタジアム「エディオンピースウイング広島」効果を検証する

2024.12.20

サンフレッチェ情熱記 第19回

1995年からサンフレッチェ広島の取材を開始し、以来欠かさず練習場とスタジアムに足を運び、クラブへ愛と情熱を注ぎ続けた中野和也が、チームと監督、選手、フロントの知られざる物語を解き明かす。第19回は、営業収益78億円という衝撃の収益増を支えた新スタジアム「エディオンピースウイング広島」効果を検証する。Jリーグに新たなビッグクラブを誕生させたこのプロジェクトは、他クラブにとっても間違いなく指針になる事例だ。

 衝撃的な数字が、サンフレッチェ広島から飛び出した。

 営業収益78億円。うち、入場料収入が24億円。もちろん、クラブ史上最高である。

 エディオンピースウイング広島の開業によって、収入はある程度は伸びると想定されていた。2023年度の営業収益は約42億円。この数字を踏まえ、サンフレッチェ広島は2024年の想定収益を約60億円に設定。前年度から42.8%の増収という超強気な予算を組んでいた。

 それでも、赤字覚悟。新スタジアム1年目ということで様々な投資も行っており、その数字を勘案すれば利益をあげるのは到底、無理だと言われていた。

 だが、蓋をあけてみれば、水曜日開催の1試合を除き、リーグ戦は全てチケット完売。唯一、完売を逃した新潟戦にしても2万2774人と、水曜日ナイターとしては異例の数字を叩き出している。それまで1万人の入場者など期待すらできなかったルヴァンカップも、プレーオフラウンドのFC東京戦が1万7924人、プレミアステージの名古屋戦では2万993人が来場した。

 ​2024年の平均入場者数は2万5609人。過去最多が初優勝を果たした2012年の1万7721​​​​人だから、まさに圧倒的な増加と言っていい。この数字は、今季のJ1リーグの中では第5位。増加率は58.8%で昇格組の東京V、町田についで第3位。収容率は90%でリーグトップ。J開幕時には「最初のブームが終了したチーム」と揶揄され、1997年には6533人/平均にまで落ち込んだクラブが、まさかこういう日を迎えられるとは。

 観客数が伸びれば当然、グッズ収入やスタジアムグルメの数字も伸びる。

 グッズ販売は9億4000万円で、去年比224パーセントという大きな数字に。また、スタジアムグルメは4億4000万円を記録し、前年に比べて3倍以上。近隣にある広島そごうのお弁当は試合日にはほぼ売り切れ、多くの飲食店も盛況となる中での、この数字である。

入場料収入が約6億円→約24億円。浦和に並ぶリーグ最高水準へ

 さらに驚くべきは、入場料収入だ。

 2023年度の数字は、6億3100万円(WEリーグ含む)。浦和の21億4500万円とは比較にならず、リーグ全体でも12位。しかし2024年度は約24億円。約3.8倍のジャンプアップを果たし、浦和の数字いかんによってはリーグトップの可能性すらある。コロナ前の2019年が5億4700万円だったことを考えても、過去トップの観客動員を記録していた2012年が5億510万円だったことを考えても、まさに驚愕の数字だ。

 特筆すべきは客単価。仙田信吾社長が「券種は様々。(グルメやグッズも含めた)リアルな単価を出すのは難しい」と語っていたが、ここはシンプルに「入場料収入÷入場者数」という数字で比較してみる。2024年は4932円で、前年度の2254円から約倍増。ちなみに浦和の2023年度は4135円だから、広島の数字の凄さがより際立つ。

 もちろん、クラブは新スタジアム開業に際してチケットの値上げを敢行したことは事実だ。ただ、それだけで倍の客単価が実現するはずはない。重要なのは、VIP・スポンサー席の充実だ。……

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Profile

中野 和也

1962年生まれ。長崎県出身。広島大学経済学部卒業後、株式会社リクルート・株式会社中四国リクルート企画で各種情報誌の制作・編集に関わる。1994年よりフリー、1995年からサンフレッチェ広島の取材を開始。以降、各種媒体でサンフレッチェ広島に関するレポート・コラムなどを執筆した。2000年、サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン『紫熊倶楽部』を創刊。以来10余年にわたって同誌の編集長を務め続けている。著書に『サンフレッチェ情熱史』、『戦う、勝つ、生きる』(小社刊)。

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