「変幻自在」なコール・パーマーは、プレミアで最も危険なアタッカーなのか?
TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#11
『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。
第11回は、昨シーズンの22ゴール11アシストに続き、今シーズンも11ゴール6アシストと絶好調のコール・パーマーのプレーに迫りたい。チェルシーで躍動する22歳は、プレミアで最も危険なアタッカーなのか?
今季、期待以上の躍進を予感させるチームの1つがチェルシーであることに疑いはないだろう。マンチェスター・シティがロドリ不在やケガ人の続出に苦しみ、アーセナルも引き分けが増えている。リバプールの一人旅になるかと思われたプレミアリーグの優勝争いに名乗りをあげているのがチェルシーだ。
新指揮官エンツォ・マレスカは余剰戦力の整理に苦しむかと思われたが、見事にチームを建て直すことに成功。中盤ではカイセドやラビアがゲームを引き締め、前線ではニコラス・ジャクソンがそのポテンシャルを解き放ちつつある。中盤で攻守両面で機能する万能型のエンソ・フェルナンデスや機動力や対人の強さを武器とするマルク・ククレジャが復調しているのも、チームにとってはポジティブな要素だろう。
今回は、その中でも圧倒的な存在感で「プレミアリーグの顔」へと駆け上がりつつあるアタッカーに注目したい。マンチェスター・シティからチェルシーに加入すると、チームの中核となったコール・パーマーだ。「コールド・パーマー」という異名でも知られる男は、そのテクニックと冷静なプレーでチャンスメイクを担っている。
ニューカッスル戦の先制点に凝縮された妙技
アーセナルのブカヨ・サカと同世代の若きアタッカーは、リバプールのモハメド・サラーやマンチェスター・シティのケビン・デ・ブルイネであっても、若い頃には跳ね返された「プレミアリーグの壁」を全く感じさせないプレーを続けている。中央付近でプレーし、中距離のスルーパスを配球できる彼は、チャンスメーカーとしても優秀だ。アーセナルのマルティン・エデゴーを思い起こさせるようなプレーエリアの広さと、デ・ブルイネのような一撃必殺の精密なロングパス。この2つを組み合わせた男は、今シーズンさらに危険なプレーヤーに変貌した。
そのスペース認知とタッチによって相手DFのベクトルを折るようなプレーは、多くの識者を驚かせている。……
Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。