Jリーグにも波及するデュエルサッカー。弱きを助け強きをくじくニューカッスルの秘密
新・戦術リストランテ VOL.45
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第45回は、プレミアリーグのトップ4相手に互角以上に渡り合いながら、ブレントフォードに4失点の大敗を喫する。強いのか弱いのかわからない、ニューカッスルの秘密に迫る。
プレミアの強豪キラー
ちょっと不思議な戦績です。第14節終了時のニューカッスルの順位は12位、5勝5分5敗とまさに中位なのですが、強い相手に強いのが特徴。
マンチェスター・シティとリバプールに引き分け、アーセナルには勝っています。上位4チームで負けたのはチェルシーだけ。
第14節のリバプールをホームに迎えての一戦は3-3。先制後に追いつかれ、2点目を入れてまた追いつかれ、83分に逆転されましたが、89分に追いついてドローというエキサイティングな展開でした。
今季好調で首位を走るリバプールが3ポイントを取れなかったのは3試合だけです。ノッティンガム・フォレストに敗れたほかは2つのドローがあるのみで、引き分けの1つはアーセナル、そしてもう1つがニューカッスル。
リバプール戦のニューカッスルは、リバプールよりリバプールっぽいサッカーをしていました。
ハイプレスが強力で、しばしばリバプールのビルドアップを寸断。ミドルゾーンでは[4-5-1]のブロックで構えますが、ブロック内に入ってくる相手は漏れなくマンマーク。特に背中を向けた相手には容赦のない寄せ方でしたね。現状、背中からの猛烈なプレッシングをいなせるチームがなくなっているので、これができるチームは有利です。
ギマランイス、トナーリ、ジョエリントンのMFトリオが強力。デュエルが強い上に、ボールを持っても非常に上手い。リバプールのフラーフェンベルフ、マカリステル、ジョーンズの3人を上回っていました。
攻撃はCFイサクのほぼワンオペですが、長いリーチを活かしたキープと懐から押し出すようなパスの精度とアイディアが秀逸。35分の先制点をズドンと決め、62分のゴードンの2点目をアシストしています。
前半はニューカッスルの方がやや優勢。後半はリバプールの猛攻を食らって3失点しましたが、強豪キラーの実力は示していたと思います。
ところが、次の第15節はアウェイでブレントフォードに4-2の負け。ブレントフォードはこの勝利で9位に浮上したとはいえ、リバプールほどの難敵ではありません。強いのか弱いのか、よくわかりません。弱きを助け(?)強気をくじく、男気溢れたニューカッスルですが、どうしてこうなっているのでしょうか。
守備から始める非構造的なサッカー
ニューカッスルのプレースタイルはリバプールと似ています。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。