“今年最悪”の伊東純也、右手骨折強行出場の中村敬斗に頼るしかない…ランスの正念場
Allez!ランスのライオン軍団 #4
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也と中村敬斗の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
第4回は、2人が調子を落とすと勝てない……今季リーグ1前半戦の山場、上位進出を争うリヨン、RCランスとのホーム2連戦を未勝利で終えたチームの厳しい現状について。
伊東「さすがに決めたかった」「シンプルに自分たちのクオリティの問題」
本拠地オーギュスト・ドゥローヌで行われた第13節のRCランス戦(11月29日)に、0-2で敗れたスタッド・ランス。試合後の取材エリアの空気は重かった。
昨シーズンまで指揮官だったウィル・スティルが敵将として凱旋。互いに手の内を知り尽くした相手との対戦は、RCランスが地力で上回った。
「選手の個人の質の差で負けたと思います。シンプルに、はがされるところではがされて、という場面もありましたし……。こっちよりもクオリティがあったと思います」
フル出場で奮闘した伊東純也の、試合後の言葉も現実的だった。
「順位で拮抗していたので、最悪でも引き分けなきゃいけない試合だった……」
勝ち点1と僅差ながら相手を上回っていたスタッド・ランスだったが、この日の結果で8位から9位に転落。代わって9位にいたRCランスが7位にランクを上げた。
試合は23分、ストラスブール時代に川島永嗣(現ジュビロ磐田)のチームメイトだったMFアドリアン・トマソンに先制点を許した後、後半61分、アンゴラ代表FWムバラ・エンゾラに追加点を決められた。
スタッド・ランスも、41分には中村の逆サイドからのパスを受けた伊東が中へ切り込み、瞬時にゴール前に入った中村に戻す連係プレーでゴールを狙ったが、中村のシュートはGKが阻止。
最大のチャンスは73分、相手CKからの展開でこぼれ球を拾った伊東が、ハーフウェイライン手前からドリブルで激走。“イナズマ”の異名を取る韋駄天は、追っ手3人を寄せつけない驚異的な走りでGKとの1対1に持ち込んだが、打ったシュートは惜しくも弾かれた。
「さすがに決めたかったです。ちょっとミスった……焦ったっすね。ファーに流したかったんですけど、ちょっと難しかったです。(相手CKのクリアボールが)こぼれてくると思ってあそこに入ったらいい感じにボールが来たので、ラッキー!と思ったんですけど……。
さすがに距離がありすぎたから、ディフェンスに追いつかれるかなと思ったんですけど、ギリギリ早めに打てたので、うまく決めたかったですね……」
この試合、相手のタイトな対人ディフェンスに阻まれてなかなかチャンスを作れなかったスタッド・ランスにとっては千載一遇の好機だっただけに、ここは1点返したいところだった。
しかしながら、スティル監督が「4日間だけの練習で機能させた」と試合後の会見でドヤ顔で明かした4バックシステムについては、「最初から想定していた」と伊東は明かしている。
“RCランスといえば3バック”というくらいリーグ1では定着していて、今年6月に前任者のフランク・エズ(現ニース監督)からバトンを受け継いだスティル監督も、ここまで全公式戦で3バックを採用していたから、これはある意味“奇策”だったのだが、4バックを想定して準備していたというスタッド・ランスのルカ・エルスナー監督も相当の策士だ。
スティル監督が仕掛けるマンツーマンディフェンスに対抗すべく、攻撃陣は巧みに動き回りながらポジションを入れ替えてスペースが空くチャンスを狙った。伊東も真ん中や左サイドと、頻繁にポジションを変えながらプレーするも、狙い通りのチャンスは作れず。それでも、精度の高いクロスから何度も好機を作り出したが、合わせた仲間のシュートは残念ながら得点には繋がらなかった。
「何回か良い場面はありましたし、ボールを受けた後のフィーリング的には悪くなかったんですけど、そこからが難しかったですね。味方とのコンビネーションが……それはシンプルに自分たちのクオリティ(の問題)だと思います」
若い選手も多いこのチームに盛り返す力はなかったと、伊東は締めくくった。
中村「本能が『接触を避けたい』と言うのか、どうしても逃げる、逃げるに…」
……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。