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J2昇格に届かなかったSC相模原の2024シーズン総括。戸田前監督からシュタルフ現監督への交代が落とした光と影

2024.11.30

相模原の流儀#10

2023シーズンにクラブ創設者の望月重良氏から株式会社ディー・エヌ・エーが運営を引き継ぎ、元日本代表MFで人気解説者の戸田和幸を指揮官に迎えたSC相模原。新たに築き上げた“エナジーフットボール”の礎を2024年6月より引き継ぐシュタルフ悠紀監督の下でJ2復帰を目指す中、“緑の軍団”が貫く流儀に2021年から番記者を務める舞野隼大氏が迫っていく。

第10回では、昇格に届かなかった2024シーズンを総括。監督交代が落とした光と影を振り返る。

 後半のアディショナルタイムだった。

 スコアレスドローが過った11月24日のJ3最終節・ガイナーレ鳥取戦で、90+3分に決勝点を決めたのは伊藤恵亮。著しい進化を見せた大卒2年目のMFが4試合ぶりの白星へと導いた。「選手として少しずつ成長できたと思っている」。この1年をそう振り返っていた伊藤以外にも、飛躍を見せた選手は多くいた。

 結果、2024シーズンのSC相模原のリーグ戦成績は14勝11分13敗。53ポイントを積み上げて、9位でフィニッシュとなった。戸田和幸監督を迎え、新人たちを主体とした編成でスタートした前年度は、9勝14分15敗で勝ち点は41。18位で終えていた昨季を考えれば躍進を遂げたように見える。

 ただしクラブを挙げて「J2昇格」を掲げていただけに、その目的地へたどり着けずどこか歯切れの悪い雰囲気で1年は締めくくられた。もちろん結果にこだわることはプロとして当然のことだが、目標設定とそこに向かうまでのプロセスは正しかったのか。

「クラブとして着実に成長していくには時間が必要」のはずが…

 相模原の代表取締役社長を務める西谷義久氏は「チームとして、クラブとして、着実に成長していくには時間が必要」と戸田監督と3年契約を結び、腰を据えて着実に前進していく意向を昨季の開幕前に示していた。「野心的なプロジェクト」(西谷代表取締役社長)で重責を任された戸田監督は選手の特長、能力も踏まえながら戦い方を構築。ディフェンスもゴールを目指すものとして行いつつ、低めのDFラインで構えながらも機を見てのハイプレスと奪ってからの素早い攻撃を1つの武器に土台を積み上げていった。

 その戦い方を継続しながら、ボール保持時、ボール非保持時でのできることを少しずつ増やしていったのが2年目だ。自陣ゴール前に押し込まれた際は、栃木SCでの1季を経て相模原へ復帰した渡辺彰宏GKコーチが授けた、シュートに対して体を投げ出す「遮断」で粘り強く対応。最後尾ではツエーゲン金沢から3シーズンぶりに戻ってきた守護神・三浦基瑛が頼もしいセーブを連発し、シーズン序盤は「守りが堅いチーム」という印象が対戦相手の中に定着していった。……

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Profile

舞野 隼大

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。

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