REGULAR

ニコ&ヤマルやロドリ抜きでも強い。欧州王者スペインが示す、代表もプランAだけでは戦えない時代

2024.11.29

サッカーを笑え #30

EURO全勝優勝から4カ月。9月に開幕したUEFAネーションズリーグでもスペイン代表は無敗を継続し、5勝1分・13得点4失点でリーグA・グループ4を首位で通過した。

 EURO2024の優勝で、EURO2012優勝以降の12年間の低迷期を脱したスペイン代表。まあ、よく考えると前年2022-23のUEFAネーションズリーグでも優勝しているからすでに低迷を脱していた、とも言えなくもないのだが、「タイトルの格」がEUROとは比べものにならない。

 さて、その2024-25のUEFAネーションズリーグでスペインはこの10月、11月の4試合を全勝(対デンマーク1-0、対セルビア3-0、対デンマーク1-2、対スイス3-2)し、グループリーグで1位を決め、来年3月の準々決勝でオランダと対戦することになった。

 今夏優勝のチームからバロンドールのロドリ(マンチェスター・シティ)とダニエル・カルバハル(レアル・マドリー)が前十字靭帯断裂で長期離脱、さらにGKウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)とCBロビン・ル・ノルマン(アトレティコ・マドリー)、両ウイングのニコ・ウィリアムス(アスレティック・ビルバオ)とラミン・ヤマル(バルセロナ)もケガで欠場したことが、むしろ戦術とメンバーの幅を広げることになった。

 試行錯誤を経た最新のベストメンバーと控えは以下の通りだ。

[4-2-3-1]は変更なし
太字:EURO優勝時のベスト11
★:パリ五輪の優勝メンバー
×:長期欠場中

■GK
ウナイ・シモン(ダビド・ラジャ/アレックス・レミロ)

■右SB
ペドロ・ポロ(×ダニエル・カルバハル
■右CB
ダニエル・ビビアン(★パウ・クバルシ)
■左CB
エメリク・ラポルト(×ロビン・ル・ノルマン
■左SB
マルク・ククレジャ(アレックス・グリマルド)

■右ボランチ
マルティン・スビメンディ(×ロドリ
■左ボランチ
ファビアン・ルイス(ペドリ?)

■右ウイング
ラミン・ヤマル(ブライアン・サラゴサ/ミケル・オヤルサバル)
■トップ下
ダニ・オルモ(ミケル・メリーノ/ペドリ)
■左ウイング
ニコ・ウィリアムス(★アレックス・バエナ/ブライアン・ヒル)

■CF
アルバロ・モラタ(アジョセ・ペレス/ホセル)

UEFAネーションズリーグ今大会のスペイン代表ゴール集

ラジャ、ビビアン、スビメンディ、バエナらで万全

 10月、11月の試合でわかったことをポジション別に少しコメントする。

 GKではダビド・ラジャ(アーセナル)がウナイ・シモンと遜色なく使えることがわかった。第3GKは実績のあるアレックス・レミロ(ソシエダ)で、落選するのはミスが多かったロベルト・サンチェス(チェルシー)だ。

 新生代表のストロングポイントはニコ・ウィリアムスとヤマルの両ウインガーのドリブル力だが、ウイークポイントもまた彼らのボールロストにある。よってSBに求められるのは何よりも守備力だ。カルバハルがいなくなった右SBはペドロ・ポロ(トッテナム)で万全。球際に強くポジションを失わず守備が堅い。左SBはマルク・ククレジャ(チェルシー)の馬力がテクニシャンのアレックス・グリマルド(レバークーゼン)を上回っている。俊足でなくとも運動量で、特に終盤に背走時の1対1を制することができるのは魅力だ。

 CBはダニエル・ビビアン(アスレティック・ビルバオ)が良い。もうル・ノルマンと同等レベルのプレーをしている。できることをきちんとやり、できないことはやらない、という自分の力をよく知る選手で、安定感がある。キック力ではパウ・クバルシ(バルセロナ)が上だが、当たり合いになった時にやや不安。彼らに続くアイトール・パレデス(アスレティック・ビルバオ)、ジョン・パチェコ(ソシエダ)はもう少し経験が欲しい。

11月15日のデンマーク戦(1-2)で、左上から時計回りにラジャ、ククレジャ、ダニ・オルモ、ビビアン

 両ボランチはロドリのいた右が純粋なセントラルMFで、ここはマルティン・スビメンディ(ソシエダ)で万全だ。ロドリほど体格は良くないが、ポジショニングの良さでカバー。ボール出しでも、キープ時のバックパスの受け手としても、CBの前でのセンターラインの守備でも遜色はない。周りを動かすだけでなく、パス交換で自分が上がって行け、ペナルティエリア内へも侵入するところがロドリとは違う。ソシエダで同僚だったミケル・メリーノ(アーセナル)がプレーしている時は、彼にカバーを任せて攻撃参加も見せる。……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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