ゼルビア・チャレンジング・ストーリー 第18回
町田の名を全国へ、そして世界へ轟かせんとビジョンを掲げ邁進するFC町田ゼルビア。10年以上にわたりクラブを追い続け波瀾万丈の道のりを見届けてきた郡司聡が、その挑戦の記録を紡ぐ。
第18回では、夏の新加入組のここまでの歩みと現状にフォーカス。昇格即優勝のために補強し、残り2節で勝ち5差を覆して快挙を成し遂げた時、そこには躍動する彼らの姿があるはずだ。
鋭く落ちる弾道のCKは、まるで未来を切り拓く虹のようだった。
直近のJ1第36節FC東京戦の79分。相馬勇紀のCKがFC東京ゴールを襲うと、「外に出そうとした」野澤大志ブランドンのクリアボールがゴールに吸い込まれた。勝負を決定づける3点目は、意外性あふれるゴールだったが、本人いわく、決してそうではない。
「ゴールシーンは狙い通りのキックですよ。急に落ちるボールはもともと蹴れるし、練習でも決めてきた形ですから」
町田での初ゴールは格別だった。チームメイトも待ち望んだゴールであることは、仲間の喜び方で一目瞭然。相馬にとっても、この先の視界が開ける待望のゴールだった。「どんどん未来に進んでいるので」。合計3チームでプレーした2024年があと2試合で終わってしまう。それも惜しまれるほど、相馬は明るい未来への道を歩み始めた。
24シーズンの優勝争いをリードしていた町田はこの夏、J1初昇格初優勝という偉業達成に向けて、重厚な戦力を補強。その顔ぶれはJ1の新参者らしからぬ豪華なラインナップだった。
中心軸は当時現役A代表だった相馬と元日本代表DFの中山雄太。ともにJ1優勝へ向けたスパートを加速させる存在としての重責を背負い、2人はゼルビアブルーのユニフォームに袖を通した。「J1優勝を確定させたい」。加入直後、そう語っていた中山の決意はまだ実を結んでおらず、残り2試合の時点で逆転優勝の可能性を残している段階だ。相馬と中山の2人は今夏の町田移籍を“正解”にできたと言えるのか。攻守のビッグネームを中心に、夏の新加入組の現在地にスポットを当てる。
“ビッグ2”相馬&中山の誤算
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Profile
郡司 聡
編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、エルゴラッソ編集部を経てフリーに。定点観測チームである浦和レッズとFC町田ゼルビアを中心に取材し、『エルゴラッソ』や『サッカーダイジェスト』などに寄稿。町田を中心としたWebマガジン『ゼルビアTimes』の編集長も務める。著書に『不屈のゼルビア』(スクワッド)。マイフェイバリットチームは1995年から96年途中までのベンゲル・グランパス。