REGULAR

バルサ&シティ撃破。ソシエダとブライトンが遂行したロジカルなジャイアントキリング

2024.11.13

新・戦術リストランテ VOL.41

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第41回は、絶好調のバルセロナとプレミア王者マンチェスター・シティがレアル・ソシエダとブライトンに屈したジャイアントキリングについて。久保建英や三笘薫も大きな役割を果たしたこの2試合。興味深いのはいわゆる「弱者の戦い」ではなく、正々堂々と正面からロジカルに戦って成し遂げた結果であることだ。

 週末に波乱が起きております。ラ・リーガではバルセロナがレアル・ソシエダに敗れて今季国内リーグ2敗目。プレミアではブライトンがマンチェスター・シティを撃破しました。シティの公式戦4連敗は異常事態と言えるかもしれません。

 ソシエダとブライトンの勝利をジャイアントキリングと言っていいかは意見が分かれるところかもしれませんが、それなりに番狂わせではあります。「負けに不思議の負けなし」と申しますから、バルセロナとシティの敗因を探ってみたいと思います。

ソシエダに対策されたハイライン戦術

 第13節、レアル・ソシエダのホームに乗り込んだバルセロナは絶好調のはずでした。CLでバイエルンに4-1、エル・クラシコではレアル・マドリーに4-0。その後もエスパニョール(3-1)、レッドスター(5-1)に連勝。国内リーグ12試合40得点の破壊力で快進撃でした。

 ソシエダ戦の敗因は絶好調だった理由と同じです。中央オーバーロード、極端なハイライン。今季の特徴が自らにのしかかってきた格好でしたね。

 先に守備の方から言及しますと、ソシエダは明確にハイライン対策を採ってきました。フィールドを対角に通過させるサイドチェンジです。これはハイライン攻略の定石の1つです。

 ハイライン&ハイプレスのバルセロナに対して、ソシエダは臆せずにパスをつないで組み立てていきます。しかし、バルセロナの寄せは非常に速いですから、そう簡単には前進できません。慌てて縦へ蹴るとオフサイドになってしまいます。

プレッシャーを受けるアイヘン・ムニョス

 速い寄せに対しては半身でキープする形になりがちです。半身から縦にパスを出すのは難しい。ですが、逆への展開はできます。そして対角のパスを逆サイドに振れば、オフサイドになることはほぼありません。さらにサイドからのクロスボールもオフサイドにはなりにくい。このルートで攻め込まれると、バルセロナのハイラインはそのままリスクになるわけです。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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