REGULAR

日本代表のミステリー。「なぜ、伊東純也がスタメンではないのか?」を考える

2024.11.06

新・戦術リストランテ VOL.40

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第40回は、インドネシア、中国との11月シリーズを前に日本代表のミステリーについて考えてみたい。なぜ、右ウイングとして最も計算できる戦力で、所属のスタッド・ランスでも好調を維持する伊東純也はW杯予選で一度もスタメン出場がないのか――?

ウイングの序列とウイングバックの序列

 11月15日のインドネシア戦で予選の1巡目が終わります。19日の中国戦からは2巡目になるわけですね。ここまで日本代表は3勝1分、得点15、失点1。すべて[3-4-2-1]というか[3-2-4-1]の超攻撃システムでした。

 このシステムの特徴は何といってもウイングバックがウイングであるところ。サウジアラビア戦だけはウイングバックだった時間帯がありましたが、その他は「バック」の要素はほぼない純粋なウイングです。

 右に堂安律、左に三笘薫。4戦すべてウイングバックはこの2人でスタートしています。そして必ずウイングバックは交代する。ウイングとシャドーはとにかく人材が豊富なので、それをフル活用したいということでしょう。

 ところで、このシステムのウリであるウイングバックの起用法について、ちょっと不思議なところがあります。

 ウイングバックは実質ウイングです。では、ウイングとしての現状の序列はどうなっているのか考えてみると、筆頭は右が伊東純也、左は三笘。森保一監督がどう考えているかは知りませんが、普通にそうだと思います。ところが、これまでの4試合の右ウイングバックはすべて堂安が先発でした。伊東はすべての試合に出場していますが、中国戦とオーストラリア戦が63分、62分から。バーレーン戦とサウジアラビア戦が後半開始からの登場でした。これが第一の謎です。なぜ、伊東を先発で使わないのか。

 では、ウイングバックとしての序列はどうでしょうか。

 これは意見が分かれるところかもしれませんが、右が伊東、左は前田大然ではないかと思います。左については前田か三笘かは微妙ですが、右は伊東でしょう。

 ウイングとしてもウイングバックとしても伊東がベストであるとすると、伊東を先発起用しないのはいっそう不思議に思えます。謎はさらに深まるわけです。

ウイングバックのプレー時間は約70分間の設定

 伊東と真逆の使い方になっているのが左の三笘です。4試合すべて先発。ただし、交代なしで最後までプレーしたのはオーストラリア戦だけでした。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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